奈良弁護士会

商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令の廃止を求める会長声明

奈良弁護士会
会長 兒玉 修一

 

  1.  農林水産省及び経済産業省は本年1月23日,商品先物取引の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定め,商品先物取引について不招請勧誘(勧誘を要請しない個人への訪問や電話による勧誘)の禁止規制を緩和すると公表した。
  2.  商品先物取引における不招請勧誘の禁止規制は,業者による不当勧誘と手数料稼ぎなどから深刻な被害が長年に渡り多数発生し,度重なる規制の強化によってもトラブルが解消しなかったため,与野党一致のもと,2009年(平成21年)7月に法改正の上,導入されたものである。その結果,商品取引に関するトラブルは大きく減少しており,不招請勧誘の禁止は,商品取引における違法勧誘及び消費者トラブルの抑止に今日まで大いに寄与してきた。
  3.  そのような中,2013年(平成25年)6月19日の衆議院経済産業委員会で金融庁が不招請勧誘禁止規制を撤廃する方向での検討を進めていることが明らかになった。
     
    これを受けて日弁連や各地の弁護士会の他,多くの消費者団体が反対意見を表明しており,当会も2014年(平成26年)2月14日付で上記の動きに反対し,むしろ総合取引所において行われる商品先物取引にも不招請勧誘禁止規制を維持するよう求める会長声明を発表している。これらを受けて,金融庁は商品デリバティブ取引に関し不招請勧誘禁止規制を維持する方向で対応したが,今回の不招請勧誘の禁止規制を緩和する省令の制定は,そのような流れと逆行する形で,当初改正案に対する多くの反対のある中公表されたものである。
  4.  本省令は,当初公表された改正案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65才未満で,年収800万円以上又は金融資産2000万円以上を有する者について,取引のリスクを顧客が理解していることを確認するなどの要件を満たした場合に,訪問や電話勧誘を許容する例外規定を盛り込んだものである。
     
    しかし,商品先物取引の被害者は高齢者,低収入者に限られない。顧客が65才未満であり,収入や資産が多いからといって,商品先物取引によって被害を被って良い道理はなく,年齢や年収,資産を要件とする合理的根拠が不明である。
     
    また,業者の中にはこれまでも資力等の申告書面を提出させたり,顧客に理解度を問う問題を出題し,これに答えさせる形で理解度確認を行う手法をとってきたものがある。しかし,実際には業者が誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教示するなどの行為が行われてきたことからすれば,結局これらの要件を追加することが顧客の保護に十分に資するとはいえない。
     
    しかも,顧客の年齢や年収,金融資産の確認は電話又は訪問による勧誘行為の過程で行われるものであるから,本省令は電話や訪問による勧誘を事実上無制約に許容するものである。本省令は,法改正によって行われるべきものを規則改正によって行おうとするものであり,法律の委任の範囲を超えた違法なものであって,法律の規定を骨抜きにするものである。
  5.  2011年(平成23年)1月施行の改正法による不招請勧誘禁止規制の導入以降,同規定が消費者トラブルの抑止に大きく寄与する中で,金の現物取引等を勧誘し,顧客と接点を持つや,すぐさま顧客を商品先物取引に勧誘し,多大な損害を与えるケースが少なからず報告されている。このような現状にあって,不招請勧誘を部分的にでも容認すれば,従前のように商品先物取引業者に消費者被害を生み出す機会を与えることになりかねず,再び不招請勧誘禁止規制導入前のような被害が発生するおそれがある。
     
    したがって,当会は農林水産省及び経済産業省が当会の意見に反し,不招請勧誘の禁止規制を緩和する本省令を定めたことに強く抗議するとともに,平成27年6月1日に予定された本省令の施行をすることなく直ちに廃止することを強く求めるものである。

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