奈良弁護士会

0742-22-2035
会長声明

消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

2016/02/22

 奈良弁護士会 
 会長 兒玉 修一
 

  1.  政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という)を設置し、その中で、消費者庁と国民生活センターを徳島県へ移転することが審議されている。
     しかし、当会は、以下の理由により、消費者庁・国民生活センターの地方移転に、強く反対する。

  2.  
  3.  東京圏への一極集中を是正する方策として、政府関係機関の地方移転を促進すること自体は、その機関に関連する民間事業者の地方展開を促す効果も期待され、地方の活性化に資する政策として評価することができる。
     ただし、政府関係機関の地方移転に積極的意義があるとしても、地方移転により、当該政府関係機関が果たすべき本来の機能が損なわれることは許されない。有識者会議は、道府県からの地方移転に関する提案のうち、官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関や、中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関に係る提案、移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案については、移転させないとしている。 

  4.  消費者庁は、食品偽装問題や中国産冷凍餃子への毒物混入事件等重大な消費者問題の発生を受け、従来の消費者行政が各省庁による縦割りであったことによる弊害が問題視された結果、消費者行政を一元化し、安全安心な市場の確保を図るため、政府全体の消費者行政を推進する司令塔の役割を担うべき組織として創設されたものである。
     消費者庁は、自ら所管する法の執行を担うほか、担当大臣の下で消費者行政の司令塔として、緊急の事態には関係省庁と対応の協議を行い、所管省庁がない場合には隙間事案として自ら対応し、所管省庁が所管法に基づく措置を取らない場合には措置要求を行う等の責務を担っている。そして、関連省庁が行う法改正に対しても意見を述べ、消費者政策全般に関する消費者基本計画の作成・見直しを行い、その作業過程において各省庁の関連部局と情報交換や施策実施の要請を行う役割がある。こうした司令塔機能を果たすためには、霞が関の各省庁に近接して消費者庁が所在し、いつでも関係部局の担当者と面談協議や資料提出要請を行うことが必要不可欠である。消費者庁の業務は消費者庁だけで完結するものではなく、司令塔機能を発揮するためには関連各省庁との緊密な連携が必須である。 
     大規模な食品被害等消費者の安全を脅かす事態に対しては、官邸および関係省庁との迅速な連絡協議によって様々な緊急対応を行う等、政府の危機管理業務を担うことが求められる。実際に、2013(平成25)年暮れに発覚した冷凍食品への農薬混入事件においては、消費者庁による他省庁との密な連携に基づく迅速な対応がなされた。 
     消費者庁は、他省庁とは異なり、創設後6年と歴史が浅く、基盤が盤石とは言えない。そのような消費者庁が、仮に、地方に移転したとすると、消費者庁以外の他省庁が移転する場合に比して、より一層機能が低下し、司令塔機能を果たすことができなくなることは明らかである。 
     消費者庁の地方移転は、まさに、有識者会議が移転させない場合として示した、官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関や、中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関に係る提案、移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案にあたるものである。 
     したがって、消費者庁を地方移転の対象とするのは不適当である。 

  5.  国民生活センターは、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)の運用等により全国の消費生活相談情報を集約・分析し、一般消費者や地方自治体に情報を発信するとともに、消費者庁や各省庁の消費者関連法制度の不備や見直しの問題提起や立法事実となる資料提供を行う等、消費者庁ほか関連省庁との緊密な連携により、政府全体の消費者行政を推進する役割を担っている。
     国民生活センターが、こうした役割を担うためには、消費者庁や他省庁との随時かつ直接の連携が必要不可欠であり、各省庁と近接し、緊密に連携しなければならない。消費者庁及び他の省庁から国民生活センターを切り離して地方移転することは、消費者行政全体の機能低下をもたらすことは明らかである。 
     国民生活センターの地方移転は、まさに、有識者会議が移転させないものとして示した、中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関に係る提案、移転した場合に機能の維持が極めて困難となる提案にあたるものである。 
     したがって、国民生活センターを地方移転の対象とするのは不適当である。 

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  7.  よって、当会は、消費者庁と国民生活センターを地方移転することについて、強く反対する。 

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