奈良弁護士会

0742-22-2035
会長声明

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決に関する会長声明

2016/05/12

 奈良弁護士会 
 会長 佐々木 育子
 

  1.  2015年12月16日、最高裁判所大法廷(寺田逸郎裁判長)は、夫婦同氏の強制を定める民法750条について、「直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない」として違憲ではないと判断した。
      また、同法廷は、女性に対してのみ6か月の再婚禁止期間を定める民法733条1項について、「婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らし、十分尊重に値する」とした上で、「本件規定(民法733条1項)のうち100日超過部分は、合理性を欠いた過剰な制約を課すもの」であり憲法14条1項及び同24条2項に違反すると判断した。
      しかし当会は、同法廷が民法750条を違憲ではないと判断したことについては是認できない。また、同法廷が民法733条の再婚禁止期間を100日間の範囲で合憲としたことについても是認できない。

  2.  まず、民法750条についてであるが、同法廷の多数意見のようにその合憲性を「憲法24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超える」ものか否かという観点から判断するとしても、そこで問題とされるべき合理性は、木内道祥裁判官も指摘するように、「夫婦が同氏であることの合理性ではなく、夫婦同氏に例外を許さないことの合理性」でなければならない。
      そしてこの点について岡部喜代子裁判官(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官、山浦善樹裁判官も同意見)は、氏の変更により個人識別機能に対する支障や自己喪失感などの負担が生じるという認識のもと、現実にはその支障や負担がほぼ妻に生じていることを指摘し、その要因として、女性の社会的経済的な立場の弱さや家庭生活における女性の立場の弱さ、種々の事実上の圧力など様々なものがあることに触れたうえで、「夫の氏を称することが妻の意思に基づくものであるとしても、その意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用している。」として、その点に配慮をしないまま夫婦同氏に例外を設けないことは、「個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超え」憲法24条に違反すると説示したが、正当な見解である。
      当会も、意見を同じくし、例外を許すことなく夫婦同氏を強制する民法750条は、立法の裁量の範囲を超え、憲法24条に違反するものであると考える。

  3.  次に、民法733条についてであるが、同規定の立法目的は、父性推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争を防止するところにあるとされている。しかし、DNA検査技術の進歩により生物学上の父子関係を科学的かつ客観的に明らかにすることが可能となった現在では、再婚禁止期間を設ける必要性は大きく減退しており、女性に対してのみ再婚禁止期間を設けることは、たとえその期間を100日間に短縮したとしても、もはや立法目的を達成するための手段としては必要最小限にしてやむを得ないものとはいえず、合理性を欠くものである。
      従って、当会は、女性に対してのみ再婚禁止期間を設けている民法733条は女性に対する不合理な差別であり憲法14条1項及び同24条2項に違反するものであると考える。

  4.  なお、政府はこの最高裁大法廷判決をうけて、平成28年3月8日、第190回通常国会に民法の一部を改正する法律案を提出した。同法律案は、民法733条1項の再婚禁止期間を100日間に短縮するとともに、女性が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合及び女性が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合に再婚禁止期間を適用しないとしている。
    この改正が実現すれば、再婚禁止期間の適用を受ける女性の数は大幅に減少することになるが、やはり再婚禁止期間が設けられその適用がなされることにかわりはなく、不充分な改正であると言わざるを得ない。

  5.  以上のような立場から、当会は、日本国憲法が定める個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した家族法を実現するため、国に対し、上記の趣旨に従い民法750条及び同733条を改正するよう強く求める。
  6.  
 
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