奈良弁護士会

0742-22-2035
会長声明

奈良地域司法計画(試案)

2001/05/26

奈良弁護士会

はじめに

2000年(平成12年)11月20日、司法制度改革審議会は中間報告を発表した。そこでは、司法(法曹)に「国民の社会生活上の医師」としての役割を果たすよう求めている。 個人や企業等の諸活動に関連する種々の問題について、法的助言を含む適切な法的サービスを提供すること。それにより紛争の発生を未然に防止すること。 個人や企業等の活動が法的ルールに従って行われるよう指導・監視すること。

さらに、ひとたび紛争が発生した場合には、これを法的ルールの下で適正・迅速かつ実効的に解決・救済を図るという役割である。 「奈良地域司法計画」は、奈良県民やその周辺住民が、司法を利用しやすいものとするために、弁護士、弁護士会、裁判所、検察庁等県下の司法がどうあるべきかを検討し、上記役割を具体化する方策を、自ら宣言し、あるいは国会・裁判所・法務省・自治体等に提言しようとするものである。

この「奈良地域司法計画」の考え方が、今後の我が国の司法制度改革に反映されることを切望するとともに、奈良県民・周辺住民も、司法を使い易くするため、「奈良地域司法計画」をめぐる論議に加わっていただきたく、公表する次第である。


第1 奈良県の地理的概要

  1. 形状、人口分布
    奈良県は、紀伊半島の中心に位置し、東西約50㎞、南北約95㎞の南北に細長い形状をしている(図1-1)。県北西部に位置し京阪の大都市圏に近接する大和平野地域に県総人口の90%が集中している。 なだらかな高原状の地形を呈している県東部の大和高原地域は、榛原町を中心とした鉄道沿線地域で住宅開発が行われたものの、地域内人口は横ばい傾向にある。県土面積の60%以上を有し、その大部分を急峻な山岳地帯で占められている県南部の五條・吉野地域においては、五條市、大淀町を除き人口は減少傾向にあり、過疎化と高齢化が進行している(表1-1)。

  2. 交通網
    奈良県にアクセスする交通としては、道路が国道24号線、国道25号線を幹路線として図1-2のとおりであり、鉄道が近鉄/奈良線・京都線・大阪線・南大阪線・吉野線、JR/奈良線・大和路線・和歌山線を主な路線として図1-3のとおりである。

  3. 地域区分と人口変化
    奈良県を区分する場合、交通事情などから北和地区、中和地区、南和地区に分けられることが多い(例えば、奈良県保健医療計画の2次保健医療圏など)。この区分に従えば、図1-4、図1-1のように、大和平野地域及び大和高原地域のいずれもが南北に分断されるかたちとなる。
    これを、人口の増減という観点と結びつけてみてみると、北和地区の生駒市、奈良市、三郷町、平群町など及び中和地区の香芝市、上牧町、王寺町などが大阪のベッドタウンとして人口が急増しているのに対し、南和地区は過疎化が相当程度進行しているという状況である。

  4. 周辺地域
    1. 京都府南部
      一方県外の隣接地に目を向けると、奈良市、生駒市に隣接する京都府相楽郡内の木津町、精華町では、生駒市、奈良市の一部地域と一体として関西文化学術研究都市の建設が進んでいる(図1-5)。
      これらの地域は、以前から通勤、通学、買い物などで奈良市を中心とする北和地区への流入が多かった地域であるが、学研都市の建設によりその傾向が一層強まっている。加えて、相楽郡内の他の町村にしても、奈良市中心部へのアクセスの方が京都市中心部へのアクセスより容易である。

      【 裁判所まで車利用による所要時間対比表 】

      奈良地・家裁本庁まで 京都地・家裁本庁まで
      距離(㎞) 時間(分) 距離(㎞) 時間(分)
      木津町
      山城町
      精華町
      加茂町
      和束町
      笠置町
      南山城村
      7
      9
      11
      10
      22
      20
      26
      15
      18
      22
      20
      36
      39
      50
      35
      36
      34
      39
      44
      45
      49
      74
      72
      69
      78
      72
      88
      95

    2. 和歌山県北東部
      五條市と隣接し、歴史的にも経済活動分野でも関係が深い和歌山県橋本市では、大阪のベッドタウン化が進み、人口が急増している。また、同県伊都郡の、かつらぎ町、九度山町、高野口町及び高野山町は、奈良地方裁判所五條支部のある五條市へアクセスする方が和歌山市へアクセスするより容易である。

      【 裁判所まで車利用による所要時間対比表 】

      奈良地・家裁五条支部まで 和歌山地・家裁本庁まで
      距離(㎞) 時間(分) 距離(㎞) 時間(分)
      橋本市
      高野口町
      かつらぎ町
      九度山町
      高野山町
      9
      15
      25
      14
      29
      18
      30
      50
      28
      58
      45
      39
      34
      41
      51
      90
      78
      68
      82
      102

第2 奈良県の司法の概要

  1. 裁判所
    1. 裁判所の所在地、管轄
      (1)所在地
      奈良県内には、奈良地方裁判所本庁(奈良市)、同葛城支部(大和高田市)、同五條支部(五條市)と奈良家庭裁判所本庁、同葛城支部、同五條支部、同吉野出張所(大淀町)と奈良簡易裁判所、葛城簡易裁判所、五條簡易裁判所、吉野簡易裁判所、宇陀簡易裁判所(大宇陀町)がある。

      (2)管轄、事務分配
      奈良地・家裁本庁、支部の事務分配区域と5つの簡易裁判所のそれぞれの管轄区域は、
      次のとおりである(図2-1参照)。
      地・家裁本庁
      奈良簡裁 奈良市、大和郡山市、天理市、桜井市、生駒市、添上郡、山辺郡、生駒郡
      地・家裁葛城支部
      葛城簡裁 大和高田市、橿原市、御所市、香芝市、北葛
      城郡、高市郡、磯城郡
      宇陀簡裁 宇陀郡、吉野郡の内 東吉野村
      地・家裁五條支部
      五條簡裁 五條市
      吉野郡の内 西吉野村、大塔村、十津川村、野迫川村
      吉野簡裁・家裁出張所 吉野郡の内 大淀町、下市町、黒滝村、天川村、吉野町、川上村、上北山村、下北山村

    2. 裁判官(2001年(平成13年)1月現在)
      (1) 県内裁判所の裁判官数は次のとおりである。
      判 事 判事補 簡裁判事
      2001年(平成13年) 10名 5名 2名
      1988年(昭和63年) 10名 2名 4名
      1953年(昭和28年) 10名 4名 4名
      (注) 簡裁判事とは簡易裁判所の事件のみを取り扱う裁判官

      (2) 裁判所毎の人数は次のとおりである。
      判 事 特例判事補 判事補
      地・家裁本庁 6名 1名 3名
      (注) 判事の内1名は所長。1名は家裁が中心で簡裁も担当。 他の判事、判事補は地裁が中心だが一部家裁、奈良簡裁を担当するものもある。

      判 事 特例判事補 判事補
      葛城支部 63名 1名 0名
      (注) 判事の1名を除き地裁、家裁、葛城簡裁を担当。判事1名は地裁、家裁を担当。

      判 事 特例判事補 判事補
      五條支部 1名 0名 0名
      (注) 五條地・家裁、五條簡裁の他、家裁吉野支部、地裁葛城支部を担当。

      簡裁判事
      奈良簡裁 1名
      宇陀簡裁・吉野簡裁・五條簡裁 1名
      ※上記は、実態をみて大まかに分類したものである。裁判所が公表している裁判官配置表では、本庁の裁判官の全てが地裁、家裁、奈良簡裁を兼務している等更に兼務が多くなっている。

      支部や簡裁の裁判官の兼任の多さが際だっている。支部や簡裁では裁判官の在庁日が少なく、各事件の開廷日、調停期日が週に1回あるいはそれ以下のところもある。裁判官のこのような執務態勢では、裁判や調停の期日間隔が長期化しやすい。 特に奈良家庭裁判所吉野出張所においては、裁判官在庁日が月に2日という情況である。


    3. 各裁判所の取り扱い事件数の推移
      (1)地・家裁

      (新受件数)
      ’53年 ’83年 ’89年 ’93年 ’98年
      本庁 民事 1376 2674 2982 4010 5193
      刑事 2611 533 386 423 465
      家事
      内調停
      2294
      385
      2017
      506
      1863
      445
      2287
      535
      2920
      657
      少年保護 958 3548 4019 2582 2193
      葛城 民事 324 1851 1538 2435 3226
      刑事 1558 275 188 186 237
      家事
      内調停
      752
      104
      1026
      233
      1049
      254
      1405
      346
      2024
      405
      少年保護 77 2096 2010 1729 1613
      (宇陀) 民事 57 207 205
      刑事 7 4
      家事
      内調停
      365
      19
      112
      18
      78
      15
      民事 136 368 393 438 596
      刑事 180 77 56 40 26
      五條 家事
      内調停
      525
      42
      115
      30
      109
      27
      139
      35
      174
      27
      少年保護 508 442 286 267
      家裁吉野 家事
      内調停
      120
      20
      115
      18
      114
      34
      147
      37
      管内合計 民事 1893 5100 5118 6883 9015

      刑事
      国選弁率
      4356
      46.5%
      909
      51.2%
      632
      49.7%
      649
      56.4%
      728
      67.9%
      家事
      内調停
      3936
      550
      3390
      807
      3214
      759
      3945
      950
      5265
      1126
      少年保護 1035 6152 6471 4597 4073
      (注) 宇陀支部は、1990年(平成2年)に廃止された。 (2) 簡裁

      (新受件数)
      ’53年 ’83年 ’89年 ’93年 ’98年
      奈良
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      779
      104
      147
      5905
      619
      593
      4995
      291
      319
      5713
      580
      505
      7978
      844
      1184
      刑事 1167 126 120 145 139
      桜井
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      292
      93
      34
      623
      22
      45
      刑事 757 3
      葛城
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      585
      43
      70
      2992
      120
      188
      2224
      85
      128
      3704
      321
      180
      5105
      552
      330
      刑事 1132 126 103 81 104
      宇陀
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      114
      12
      19
      463
      14
      14
      303
      11
      7
      406
      37
      19
      410
      31
      20
      刑事 359 1 3
      五條
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      162
      18
      32
      452
      18
      24
      235
      10
      21
      282
      32
      20
      382
      31
      12
      刑事 511 17 21 19 11
      吉野
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      158
      27
      30
      500
      37
      13
      346
      16
      17
      363
      43
      21
      512
      38
      16
      刑事 514
      県内合計
      民事
      内通常訴訟
      内調停
      2090
      181
      332
      10935
      830
      877
      8103
      413
      492
      10468
      1013
      745
      14387
      1496
      1562
      刑事 4440
      67.2%
      292
      62.9%
      270
      74.4%
      245
      73.9%
      257
      79.1%
      (注) 民事の中では、督促事件が圧倒的に多い。 1953年(昭和28年)の刑事事件が多いのは、戦後の混乱期の世相を反映した窃盗、食糧管理法違反事件と公職選挙法違反事件の多発による。
      (注) 桜井簡裁は、1988年(昭和63年)に廃止された。 民事事件や家事事件は、全国的傾向と同様、最近急増している。特に、民事調停利用者の増加が著しい。

    4. 調停の現状
      調停は、調停主任(裁判官)と2名以上の調停委員(裁判官以外の民間人)で組織される調停委員会が当事者の主張をよく聴いたうえで、実情に即した自主的な紛争解決を目指す制度である。
      離婚やそれに伴う問題等家事事件の多くや借地借家の地代変更など、いきなり訴訟提起は出来ず、まず調停を経なければならない事件分野が相当ある。また、訴訟の判決による解決が必ずしも適当でない紛争もある。そのため、前記のとおり民事、家事とも調停申立件数は急増している。

  2. 弁護士

    1. 弁護士の数と分布
      2001年(平成13年)5月1日現在、奈良県内に事務所を構える弁護士は80名である。
      15年前には38名であったから全国的に見ても特筆に値する増加率である。
      しかし、その分布は、奈良市62名、橿原市11名、大和高田市5名、生駒市2名となっており、約77.5%が奈良市に集中しており、バランスを欠いている。(2001年(平成13年)5月現在)。

    2. 弁護士の取扱業務
      弁護士法3条は、弁護士が取り扱う職務を「法律事務」と定めているが、その代表例として具体的には次のようなものがある。
      • 各種法律相談
      • 民事・家事に関する訴訟・調停・執行・保全・倒産事件等の代理
      • 民事・家事事件に関する交渉の代理
      • 契約書等の法律文書の作成
      • 刑事事件における弁護、少年事件における付添
        (裁判所からの選任)
      • 破産管財人、相続財産管理人、成年後見人
      • 刑事国選弁護人
        (弁護士会からの依頼)
      • 刑事当番弁護士(63名の弁護士が担当)
      • (仮称)民事当番弁護士(56名の弁護士が担当)

    3. 弁護士による法律相談
      (1) 弁護士会(以下、断りのない限り奈良弁護士会のことを指す)
      1. 実施状況
        弁護士会総合法律相談センターの法律相談の実施状況は次のとおりである。総合法律相談センターが実施する法律相談には、大別して、弁護士会での法律相談、南和法律相談センターでの法律相談、憲法週間記念法律相談、法の日記念法律相談がある。
        表中の数値はこれらを合計したものであり、括弧内の数字はそのうちの南和法律相談センターの数値である。相談枠は、ほぼ毎回予約で埋まる状態である。
        ’96年(H8年) ’97年(H9年) ’98年(H10年) ’99年(H11年)
        相談実施日数 195日
        (23日)
        187日
        (49日)
        199日
        (49日)
        200日
        (49日)
        相談実施件数 1057件
        (126件)
        1170件
        (257件)
        1198件
        (259件)
        1176件
        (248件)

      2. 南和法律相談センターの自治体別相談数
        同法律相談センターは、南和地域の弁護士過疎対策として、1996年(平成8年)10月から、五條市、吉野郡町村会、内吉野郡町村会から補助を受けながら弁護士会が五條市内で運営しており、1996年(平成8年)~99年(平成11年)度の市町村別相談件数の合計は下記のとおりである。管内人口に五條市が占める割合は37%であるのに対し、相談者の占める割合は59%と高率である。
        他の町村住民の利用率が低い原因として、需要自体がそう多くない可能性もあるが(吉野、大淀、下市町独自の法律相談の1回当たり利用率が、他の自治体相談の利用率と比較すると低い。)、相談所までの距離が遠いこと、県内でも特に高齢化が進む地域であることも無視できないと思われる。
        五條市 吉野町 大淀町 下市町 天川村 上北山村 下北山村
        555件 45件 121件 58件 3件 4件 3件
        川上村 黒滝村 野迫川村 大塔村 十津川村 西吉野村 その他
        17件 9件 5件 8件 23件 35件 4件

      3. 相談内容別件数
        弁護士会主催の法律相談を内容別に分類すると次のとおりである。
        1999年(平成11年)
        相 談 内 容 件 数
        金銭関係 交通事故 353
        損害賠償請求 34
        慰謝料請求 11
        貸金請求 17
        給料・退職金請求 11
        その他 44
        不動産関係 土地・建物登記請求 6
        土地・建物所有権確認請求 8
        土地建物明渡 17
        境界確認請求 21
        借地・借家 33
        その他 52
        家庭関係 離婚請求 143
        認知請求 2
        遺産分割(相続・遺言を含む) 98
        その他 51
        その他 債務不存在 5
        強制執行 1
        消費者問題 9
        消費者金融(サラ・クレ、個人破産を含む) 1
        事業者破産 7
        解雇無効・地位保全 8
        刑事 7
        少年 1
        高齢者 1
        その他 63
        合 計 1176
        ※交通事故、消費者破産等多重債務問題、離婚、遺産分割等が多い。

      4. 弁護士会による弁護士紹介
        (従来型紹介の問題点)
        上記、弁護士会や地方自治体等の法律相談は、ほとんどが一人20分ないし30分、1日6名から9名枠の予約制で実施されているところ、緊急な相談を要する相談者、あるいは相談だけではなく弁護士依頼の意思が明白な相談者については、弁護士会が所属弁護士を紹介してきた。
        その数は、正確な統計はないが、1日当たり7~8件、年間千数百件程度になる。

        そして、従来は、5名の弁護士の連絡先を連記したカードを相談者に交付し、その中から相談者が任意に選択して各自予約を取るカード式紹介方式が行われていた。
        ところが、カードに記載された弁護士がその時点で相談時間を確保できるとは限らないため、相談者にとっては予約が入りにくいとの苦情が寄せられていた。

        (仮称;弁護士紹介センターの試行)
        弁護士会では、2000年(平成12年)12月から、上記弁護士紹介制度の問題点を解消すべく試験的に担当弁護士当番制を導入している。この制度は、あらかじめ相談担当者として登録した弁護士(1日あたり2名)が指定日には各6件の相談を受けられる時間を空けて事務所で待機するシステムである。現在56名の弁護士が登録している。
        この制度には、相談者にとって、緊急の相談でも予約が可能であり、また相談希望日時に応じて確実に予約が入れられるという長所があると考えられた。
        なお、これに伴い、弁護士会での一般相談は交通事故を除いて現在休止している。
        2000年(平成12年)12月から2001年(平成13年)3月までの実績は次のとおりである。この制度については、本当に利用者にとって利便性の高いものとなっているのか、実態調査を含めてさらなる検討が必要である。
        ’00(H12)/12 ’01(H13)/1 ’01(H13)/2 ’01(H13)/3
        申込み(紹介) 172件 189件 193件 270件
        相談実施 114件 117件 116件 135件
        相談で終了 83件 74件 81件 103件
        弁護士依頼 23件 29件 21件 16件
        未定 8件 13件 14件 16件

      (2) 地方自治体等における法律相談ー1999年(平成11年)実績

      (本庁管内)
      日 数(日) 件 数(件)
      奈 良 市 168 1371
      同商業振興センター 12 21
      大和郡山市 36 279
      天理市 24 185
      同女性センター 12 61
      (財)暮らしの相談センター 96 268
      損保協会 50 106
      桜井市 24 162
      同社会福祉協議会 2001年(平成13年)から
      生駒市 51 450
      斑鳩町 12 73
      県中小企業課(元金融課) 12 27
      小  計 505 3008


      (葛城支部管内)
      日 数(日) 件 数(件)
      橿原市 24 192
      同女性法律相談 23 75
      御所市 12 78
      香芝市 12 107
      河合町 6 32
      新庄町 6 54
      県高齢者相談センター 50 193
      障害者110番 12 19
      (財)県広域地場産業振興センター 12 37
      大和高田社協 36 291
      王寺町 ・上牧町 12 98
      当麻町 2000年(平成12年)から
      小  計 205 1176


      (五條支部管内)
      日 数(日) 件 数(件)
      大淀町 12 32
      吉野町 12 15
      下市町 12 22
      小  計 36 69
      南和法律相談センター (在五條市) 49 284


      (五條市及び吉野郡町村会、内吉野郡町村会の3町9村の補助を得て弁護士会が実施)

      1人当たりの相談時間は相談場所によって異なるが、希望者の多い奈良市、生駒市などは20分、王寺町・上牧町ではわずか15分しかない(2001年(平成13年)4月現在)。このような状態では、ゆとりのある相談は行いにくい。

      また、広陵町や田原本町など相当数の人口を有しながら常設の法律相談場所が存在しない地域もあり(臨時に依頼されることはある)、今後、各自治体と連携し、実施地域を拡大することが必要である。ほとんどの相談窓口は、相談枠が一杯となっているが、一部のところは利用者が少ない。広報など検討されるべきである。

      また、上記の各相談のほか、特に多重債務問題については、1996年(平成8年)から奈良県の中小企業課においても法律相談が行われている。1998年(平成10年)度で合計32件の相談に応じている。しかし、他の相談窓口における多重債務関係の相談の件数と比較した場合、この件数は非常に少ない。今後、相談のあり方を再検討すべきである。



      (3) 地域別法律相談回数と件数
      (弁護士会の相談とその他の相談を合計した1年間あたりのもの)
      年間回数 年間回数/
      人口1万人
      年間件数 年間件数/
      人口1万人
      本庁管内 652回 8.1回 3,833件 47.6件
      葛城支部管内 219回 4.1回 1,265件 23.2件
      五条支部管内 85回 8.9回 317件 33.0件
      このように分類すると、特に葛城支部管内での法律相談の実施が不充分であることが分かる。

    4. 刑事・少年事件当番弁護士制度の現状
      弁護士会では、1990年(平成2)年に大分県弁護士会に続き全国で2番目に起訴前の刑事被疑者に対する登録型当番弁護士制度を発足させ、1992年(平成4年)からは年間365日の待機型に拡充した。
      年々申込件数が増加しており、1999年(平成11年)度は1年間で594件になっている。同年度の出動先別件数は下記のとおりである。弁護士数の少ない中和地域において出動の頻度が高く、当番弁護士の需要が高いという結果が明らかになっている。
      出動先 奈良署 奈良西署 生駒署 郡山署 西和署 天理署 桜井署 田原本署
      件数 42 47 26 44 64 51 20 57
      出動先 橿原署 高田署 宇陀署 五條署 中吉野署 少年鑑別所 少年刑務所 葛城拘置支
      件数 69 85 30 34 1 18 3 3

    5. 法律扶助制度の利用状況
      (4) 制度の概要
      法律扶助制度は、資力の乏しい人の為に、弁護士費用などを立て替える制度である。日本では、1952年(昭和27年)に日本弁護士連合会が出資し、財団法人法律扶助協会を設立して運営してきた。国からも補助金は出ていたが、諸外国と比較すると極めて少なく、それ故に利用されることも少なかった。
      しかし1993年(平成5年)頃から、法律扶助制度の拡充のため根拠法の必要性が説かれることになり、2000年(平成12年)10月、ようやく民事法律扶助法が施行されることになった。このような経緯の中で、法律扶助利用者は近年急増しており、今後も一層の増加が見込まれる。

      (5) 民事・家事関係
      県内における民事法律扶助事件数の推移、事件分類、市町村別利用者数は次のとおりである。
      1. 扶助事件数の推移
        申 込 扶 助 拒  否
        1983年(昭和58年)度 不 明 6件 不  明
        1988年(昭和63年)度 不 明 19件 不  明
        1989年(平成元年)度 17件 17件 1件
        1993年(平成5年)度 64件 39件 13件
        1998年(平成10年)度 149件 109件 39件
        2000年(平成12年)度 192件 177件 15件
        ※2001年(平成13年)は、1,2,3月で、既に111件の申込みがなされている。
        ※当該事件が必ずしも当該年度に処理されるわけではないので、「扶助」「拒否」の合計は、「申込」の件数に一致しない。

      2. 事件分類ー1998年(平成10年)度
        自己破産 47件
        離婚など 39件
        離婚以外の親族法関係(婚費分担、認知、婚姻無効など) 9件
        損害賠償(主に交通事故) 9件
        任意整理 6件
        貸金関係(保証否認含む) 5件
        保全措置 10件
        その他(家明、登記移転請求など) 5件

      3. 市町村別扶助件数ー1998年(平成10年)度
        奈良市 45件
        橿原市 13件
        生駒市 5件
        桜井市 14件
        大和郡山市 5件
        天理市 6件
        大和高田市 9件
        御所市 6件
        五條市・香芝市 各 1件
        生駒郡 2件
        北葛城郡(河合町、広陵町、當麻町) 4件
        磯城郡(三宅町) 3件
        吉野郡(大淀町) 4件
        宇陀郡(榛原町、室生村) 3件
        高市郡(高取町、明日香村) 2件
        その他(大阪府、京都府など) 8件

      4. 事件の中身としては、自己破産申立、債務整理といった多重債務問題、離婚が際だって多いが、これは制度趣旨からして当然のことであり、今後もこの傾向は続くであろう。
        なお、民事法律扶助法施行後は、相談者が扶助協会支部を訪れて申込手続をするという制度が、相談登録弁護士制度の発足により、各弁護士が相談を聞く中で扶助相当と判断した場合に個別に申込手続を行うという制度へと変更された。したがって、今後は、各弁護士事務所へのアクセスを一層容易にすることと、各弁護士が扶助申込手続に精通し、いつでも申込ができる準備を整えておくことが重要になる。

      (6) 刑事・少年事件関係

      刑事被疑者弁護援助および少年保護付添扶助の近年の実績は下記のとおりであり、特に1996年(平成8年)以降、急激な増加傾向を示している。 現在この分野について国庫補助がないので、今後財源の十分な充実が望まれる。

      年度 ’90 ’91 ’92 ’93 ’94 ’95 ’96 ’97 ’98 ’99 ’00
      刑事 3 3 3 5 6 5 15 23 17 35 46
      少年 0 1 1 1 4 2 4 8 8 10 15
    6. 高齢者・障害者支援センター

      弁護士会は、高齢者及び障害者の権利の確立と自立支援を目的として、2000年(平成12年)4月1日、高齢者・障害者支援センターを発足させた。このセンターにおいては、高齢者あるいは障害者から財産管理の依頼があった場合に、センターが登録者名簿の中から担当弁護士を斡旋する手続きがとられる。

      また、補助人・保佐人・成年後見人等の候補者の斡旋や、高齢者・障害者に対する専門法律相談などの業務も予定されている。2001年(平成13年)度の登録者は34名である。 制度が十分知られていない故か、今のところ利用者が少ない。しかし、これから高齢化社会を考えると、その果たすべき役割は大きい。 弁護士会では、1994年(平成6年)に遺言センターを発足させ、遺言相談(出張を含む)や遺言書(公正証書遺言)保管業務を行っている。

    7. その他外部団体との連携
      (1) 犯罪被害者支援ネットワークへの参加
      「なら被害者支援ネットワーク」は1999年(平成11年)2月18日に発足したものであり、性被害者支援専門部会、交通被害者支援専門部会、少年被害者支援専門部会の3つの専門部会が組織され活動している。弁護士会は、その構成員として法的支援ニーズに対応するとともに、会内にも犯罪被害者対策特別委員会を設置し、会員の意識向上・支援体制の充実を目指している。

      (2) 財団法人奈良県暴力団追放センターへの参加
      弁護士会は上記団体に3名の弁護士を派遣しており、各事業所次長への講習を担当しているほか、県下6箇所に年間6回の出張相談を行っている。

      (3) ひまわりテレホンへの協力
      保護観察所の実施している保護観察対象者の電話相談(ひまわりテレホン)に関して、法律相談を内容とする相談について、弁護士会が対応する制度が2001年(平成13年)に確立した。 (4) 奈良児童虐待防止ネットワークへの参加
      児童虐待の問題に関して、2000年(平成12年)6月に発足した奈良児童虐待防止ネットワーク「きずな」に弁護士会の有志が参加し、事例研究会などを通じて、関係各機関との協力体制を築いてきた。

  3. 検察庁・矯正施設・保護施設
    1. 刑事裁判・少年審判関係機関
      (5) 検察庁
      検察庁はそれぞれの裁判所に対応して置かれており、奈良県では、奈良地方検察庁と奈良・葛城・五條・宇陀・吉野の各区検察庁が設置されている。
      【職員数】(2001年(平成13年)3月現在)
      検事 7名  副検事 10名  検察事務官  92名
      (注) 本年3月まで葛城支部の正検事は1名であったが、4月から2名に増員された。また、五條区検には常駐する検事がいなかったところ、本年4月より副検事1名が常駐するようになった。
      【取扱い事件数】(2000年(平成12年)分)
      27,470件(内家庭裁判所送致 2,966件)

      (6) 少年鑑別所(奈良市)
      収容定員は23名(少年18名、少女5名)であるが、最近収容実員が増加傾向にあり、2000年(平成12年)は戦後2番目の多さであった。 職員は、所長を含め20名で、内技官は3名である。

    2. 施設内処遇機関
      (1) 奈良少年刑務所(奈良市)
      1901年(明治34年)に自所工事として着工し、1908年(明治41年)7月に竣工した歴史的行刑施設である。受刑者の他未決拘留中の者も収容されている。 大和高田市には、葛城拘置支所がある。
      それぞれの収容定員、1日あたりの平均収容人員は次のとおりである。 【収容定員】
      受刑者 未決者 職員定数
      奈良本所 649名 53名 184名
      葛城拘置支所 15名 55名 15名
      【1日あたりの平均収容人員】
      ’97(H9) ’98(H10) ’99(H11) ’00(H12)
      奈良本所 601名 646名 701名 704名
      葛城拘置支所 37名 32名 36名 44名
      ※奈良本所においては、収容定員を上回ることもある。

      (2) 奈良少年院(奈良市)
      特別・中等・初等少年院である。収容定員は100名。収容実員は1997年(平成9年)後半から漸増傾向にある。職員定員は46名である。

      (3) 篤志面接委員・教誨師
      奈良少年刑務所の篤志面接委員として、男性18名、女性3名、教誨師として24名が、施設内処遇におけるボランティアとして関与している。
      奈良少年院の篤志面接委員として、男性12名、女性4名が、施設内処遇におけるボランティアとして関与している。なお、教誨師については必要に応じ奈良少年刑務所から出向いてもらっている。

    3. 社会内処遇機関
      (1) 奈良保護観察所(奈良市)
      職員定員は12名、内保護観察官は9名。保護観察の対象者数は1995年(平成7年)を底として漸増傾向にある。

      (2) 保護司
      県下に、557名(男性415名、女性142名)の保護司がいる。
      保護区及び保護司の配置は別紙「保護区及び保護区の状況」のとおりである。
      保護司による電話相談「ひまわりテレホン」を全国に先駆け実施している。

      (3) 更生保護法人至徳会(奈良市)
      保護観察中の者や刑務所からの満期釈放者を対象として、適当な住居のない者を宿泊させ、必要な教養訓練をするなどして、早期の社会復帰を援助する施設である。
      2000年(平成12年)に新築された施設は、収容定員15名である。職員は、調理員2名を含め5名である。

      (4) その他のボランティア
      更生保護法人奈良県更生保護協会
      奈良県BBS連盟
      奈良県更生保護婦人連盟

  4. 裁判外の紛争解決手段(ADR)
    裁判所の民事・家事調停以外のADRとして、県内には次のような機関が存在する。
    1. 民間型
      (1) 交通事故示談斡旋センター
      財団法人日弁連交通事故相談センター奈良県支部が主催する示談斡旋の実施機関である。1件につき弁護士2名が担当員として斡旋手続を進行する。1995年(平成7年)から99年(平成11年)までの5年間で、総受理件数135件のうち100件(約74.1%)が示談成立となっている。

      (2) 交通事故紛争処理センター(在大阪市)
      財団法人交通事故センターが主催する和解斡旋および一般交通事故相談の実施機関である。奈良県には支部はないが、大阪支部の手続が利用されている。1998年(平成10年)度の和解斡旋依頼776件に対し、示談成立が470件である。

      (3) 医事紛争審査会
      奈良県医師会に設置された医療事故事件の紛争処理機関であるが、データの公表を一切行っていないため、詳細は明らかではない。

      (4) 指定住宅紛争処理機関
      弁護士会が、建設住宅性能評価書がある住宅(評価住宅)について、注文主と建設業者間、売主と買主間の紛争について、あっせん、調停及び仲裁を行う機関である。住宅品質確保促進法に基づき、2000年(平成12年)9月1日に発足した。 制度発足後、あまり時間が経過していないこともあり、現在のところ、紛争解決申請はない。

    2. 行政型
      (1) 消費者相談員による消費者相談
      奈良県生活科学センター(奈良市)、第2生活科学センター(橿原市)及び県下9市1町では、消費者相談員による消費者相談が実施されている。その相談件数は、下記のとおりである。なお、これらの相談は、商品への苦情のほか、広く消費生活上の事項についての質問をも対象としており、下記の数字は両者を合計したものである。
      1993年(平成5年)と1998年(平成10年)を比較すると、ほぼすべての相談所で相談数は増加の傾向を示しており、また多くの相談所でその増加率は高い。
      身近で利用し易い相談所として、各相談所は今後も需要が増えるものと思われる。

      なお、近時、神奈川県において県の消費生活センター相談窓口が廃止されたのを皮切りに、他のいくつかの県においてもセンターの廃止・統合が検討されていることが報道されているが、相談者にとっての利便を考慮すると相談窓口を廃止するのは妥当でなく、むしろこれを拡充する方向で検討すべきである。
      1993年(H5年)度 1998年(H10年)度
      生活科学センター 3157 件 4064 件
      第2生活科学センター 1416 件 1622 件
      奈良市消費者相談 331 件 541 件
      生駒市消費者相談 519 件 675 件
      大和郡山市消費者相談 264 件 403 件
      天理市消費者相談 37 件 89 件
      橿原市消費者相談 (不明) 56 件
      大和高田市消費者相談 20 件 67 件
      桜井市消費者相談 41 件 50 件
      御所市消費者相談 26 件 58 件
      香芝市消費者相談 23 件 44 件
      三郷町消費者相談 14 件 15 件
      斑鳩町消費者相談 25 件 34 件
      上牧町消費者相談 21 件 34 件
      王寺町消費者相談 34 件 31 件
      吉野郡消費者相談 (不明) 16 件


      (2) 人権相談
      奈良地方法務局及び葛城、五條、宇陀の各支局では、人権擁護委員と人権擁護課職員による人権相談が行われている。1999年(平成11年)の実績は次表のとおりである。

      常設相談 特設相談 委員自宅
      職員 委員 職員 委員 委員
      家事事件 102 16 2 210 71 401
      不動産 4538 5 1 107 45 4708
      損害賠償 18 4 17 6 45
      その他民事 90 10 5 160 42 307
      刑事事件 11 8 2 21
      行政事件 113 28 9 150
      税務事件 13 13
      労働事件 33 4 16 4 57
      その他 303 39 7 118 33 500
      合 計 5208 74 677 212 6202
      (注) 常設相談で、不動産関係の相談数が多い。これは法務局が登記業 務を行っている関係上、登記に関する相談が多いためと思われる。

      (3) 労働委員会
      奈良県に設置された労働関係に関する紛争(とりわけ不当労働行為)についての解決機関であり、大別して、救済命令申立手続と調整手続に分けられる。 その実施状況は表2-2のとおりである。

      (4) 公害審査会
      奈良県に設置された公害紛争についての調停・斡旋機関であり、1981年(昭和56年)から2000年(平成12年)まで合計18件(ただし、既係属事件への参加申立事件を含むので、実質は10件)について利用されている。

      (5) 建設工事紛争審査会
      奈良県に設置された建設工事に関する紛争についての斡旋・調停・仲裁機関であり、1990年(平成2年)から99年(平成11年)まで合計13件について利用されている。制度についての周知度が低いように思われるので、今後十分な広報活動が求められる。

第3 これからの奈良の司法

  1. 弁護士の改革
    1. 総論
      法曹は「社会生活上の医師」であるべきといわれている。中でも市民に最も身近な弁護士には、基本的人権の擁護ならびに様々な紛争の事前防止及び不幸にして発生した紛争の適正・迅速な解決・権利救済の手助けを期待されている。
      ところが、これまで弁護士の仕事内容は「裁判」に直接関連する部分に極端に偏っていた。勿論、民事裁判における訴訟代理人としての活動、また刑事裁判における弁護人としての活動の重要性は、今更語るべくもない。

      しかし、紛争の予防にどれだけ関与してきたか。裁判に至る前の段階で、どれだけ適切な助言を与えてきたのか、裁判後の市民に対するケアーはどうであったのか、という観点から振り返るとき一定の疑問をいだかざるを得ない。また、すべての市民に対して良質な法的サービスを利用しやすい形で提供してきたのか、という点でも改善の余地がある。

    2. 法律事務所の拡充と分散
      前記のとおり法律事務所の所在が奈良市内に極端に集中しており、中南和地域に不足していることは明らかである。この地域への法律事務所増設が急務である。交通の便や人口分布を考慮すると、現在法律事務所のない五條市、王寺町、大淀町、榛原町などへの新設も必要である。内五條市には2名以上の配置が必要である。
      これから弁護士に求められる活動分野が、従来のような訴訟等裁判所を中心とする活動から、紛争予防の法律相談など裁判外活動をも重視すべきとすれば、奈良市以外の北和の都市にも新設が必要である。
      これまで法律事務所の支店設置が法律上禁止されていたところ、近々解禁される見込みである。この制度も利用した分散配置の意欲を喚起すると共に、誘導策を検討する。
      これまでの弁護士業務が裁判所を中心としたものであり、法律事務所が裁判所近辺、中でも大都市に集中してきた最大の原因は、他の業務を中心とした法律事務所運営は、経済的に成り立たないことにあった。住民のニーズに応えるためには事務所の分散が必要であるが、経費面の公的支援など誘導策が必要である。

    3. 弁護士業務の拡充
      (1) 多様化
      社会が複雑となると共に、弁護士に求められる役割も多様化してきている。従来の訴訟など裁判所中心業務から相談、契約書作成、成年後見などの紛争予防業務を積極的に行えるような法律事務所も必要である。

      (2) 専門化
      また、安価で良質なサービスを提供しようとすると、弁護士に対しても医療の世界でみられるような専門化を求められることになる。 これまで弁護士数も少なく、専門化し難かったが、最近急増傾向にあり、今後は意識的に専門性を備えた弁護士を増やすようにすべきである。例えば消費者問題、税務事件、行政事件、建築紛争、医事紛争、工業所有権等についての専門性を備えた弁護士を確保する。

      (3) 行政へのかかわり
      弁護士会会員の行政委員会や審議会へのかかわりは、別表3-1のとおりである。行政分野における法の支配をはかるためには、更に幅広く行政とのかかわりを持つ必要がある。
      専門知識を持つ民間人を5年以内の期限付きで国家公務員に登用する「任期付き任用法」が2000年(平成12年)11月成立した。今後は地方公務員にも拡大される可能性がある。
      弁護士が、これまで以上深く行政にかかわることも視野に入れたい

      (4) 高齢者、障害者への法的サービスの提供
      これまで権利が制約されがちであった高齢者・障害者が、自己の人生・生活を自らデザイン出来るよう手助けをしたい。2000年(平成12年)4月から施行された成年後見制度は、財産管理面・身上監護面での法的サポートである。この制度は、高齢者はもとより知的障害者や精神障害者にも広く普及されるべきである。
      今後、高齢者・障害者本人、家族、社会福祉施設、病院、ボランティア団体など福祉関係者に成年後見制度の必要性、利便性、効用を活発に広報し、同制度の広範な普及を実現したい。
      また、関係施設の運営の透明化をもめざしたい。
      また、その他の法的サポートや、高齢者・障害者の人権侵害に対する権利擁護活動についても、充実させたい。

      (5) 附添人活動の充実
      単に少年のための(処分を軽くする)弁護活動ではなく、保護環境の整備の一環として、試験観察はもとより、保護処分後の少年との面接、家族の相談を実施する等、審判に限定しない附添人活動、即ち少年の更生に資する活動を広く展開すべく研修等を充実する。

      (6) 犯罪被害者支援活動としての相談・援助活動の充実、強化
      いわゆる犯罪被害者保護法をはじめとする、犯罪被害者の意見陳述権等を規定した犯罪被害者支援諸法により、犯罪被害者の法的な地位が具体的かつ明確化された。
      これに伴い、犯罪被害者対策特別委員会を中心として、犯罪被害者の事件情報へのアクセスの支援や犯罪被害者の意見表明権を含めた刑事裁判手続きへの参加のための援助、また犯罪被害者が捜査の過程やマスコミ報道などにより更なる被害を受けることを防止する活動等の充実、強化を目指す。

    4. 弁護士会活動の充実
      (1) 弁護士情報の提供
      市民が、弁護士と相談したいと思った場合に、「誰に頼めばいいのか分からない。」との声が聞かれる。広告規制の緩和により、個々の弁護士や法律事務所からの広告も増えるであろうが、当面は弁護士会としても、事務所や弁護士の専門性等についての広報をする。 現在作成中の「弁護士マップ」もその一役を担うであろう。

      (2) 司法利用者の意見の反映
      弁護士会では、法律相談、弁護士紹介、当番弁護士の派遣等を行っているが、その実態が果たして利用者からみて十分なものであるのか、改善すべき点はないか等について、定期的に利用者や裁判所、検察庁の率直な声を聞くようにすべきである。
      また、裁判所や検察庁に対する利用者の意見も聞いた上で、法曹間の意見交換をおこない、法曹全体の質の向上に努めるべきである。
      個々の弁護士に関する苦情については、既に弁護士業務に関する市民窓口が制度化されており、今後も積極的に広報したい。

      (3) 中和法律相談センターの新設と中和地域への弁護士会館確保
      前記のとおり、中和地域では法律事務所が少ないばかりか、弁護士会・自治体の法律相談回数も北和・南和地域と比較し極めて少ない。
      法的サービスに対する潜在的な需要は相当程度存在する。したがって、中和地域での弁護士会による法律相談センターを設置し、市民のための相談窓口を増やすことが必要である。
      相談センター設置場所として、中和地域に弁護士会館を確保する必要が生じるが、これは副次的に中和地域への弁護士増加をもたらすことも期待される。

      (4) 電話相談窓口等
      弁護士過疎の実情、市民の需要に応じ切れていない弁護士人口の現状を前提とした場合、さらに弁護士へのアクセス障害を緩和する一つの方策として電話相談が有効と考えられる。
      電話相談は、相談者との信頼関係を築きにくく証拠書類に目を通した対応が出来ない不十分さがある。
      しかしながら、遠隔地の市民の側からみた場合、便利さという点では利用価値が極めて大きい。また弁護士の側から見ても、直ぐに弁護士が受任して対処すべき事件と簡単なアドバイスで足りる事件との振り分けを容易にすることができる。さしあたり地元自治体の協力を求めながら南和地域において導入したい。
      将来地元の体制が整えば、テレビ電話による相談も実施したい。

      (5) 公設事務所の設立について
      弁護士過疎対策としては五條支部管内の五條、吉野(大淀町)に最低一 つの法律事務所の設置が望ましいが、採算上、経営可能かどうかの問題が残る。弁護士会としては個別弁護士が事務所を設置するに、一定の資金的、あるいは受任事件等についての援助を検討したい。
      過疎対策とは別の視点で採算の合わない事件(少年事件や国選事件、自己破産事件)、あるいは公益性の高い事件、事業(少年、刑余者のための広範な活動を視野に入れる活動、人権擁護的活動、消費者問題、行政事件等NPO的活動を中心とする)については、弁護士会からの援助以外に公的補助あるいは広く寄付を募る等してこのような公設事務所の設立を目指したい。その場合、医師、ケースワーカー等の専門家の出向、ボランティアの参加という形でのスタッフを受入れ、地域における法的NPO活動の実現、充実を検討する。

      (6) 教育現場との連携
      教育現場に弁護士を直接派遣し、予防法学的立場から消費者問題、多重債務、離婚問題等社会生活上必要な法的知識の普及のための講義を実施する。
      また、女性問題、高齢者・障害者の権利問題、部落差別、民族差別等の人権問題、ゴミ問題等の環境問題等に対する教育の一環としての講演、講義を実施する。
      さらに学校現場における諸問題(主に非行、不登校、学級崩壊等)についての生徒、父母、教師に対する相談、助言活動を行う。
      以上を中学校、高校を中心にして実現したい。そのための広報をし、小さな会議、講演活動の実行を積み重ねて教育委員会へ働きかける。
      ところで、少年非行に関わる問題に関しては、弁護士会として、これまでにも家庭裁判所調査官、鑑別所技官、少年院の職員、保護司、警察官、教師との座談会を行い、その中で対応を協議するとともに、関係各機関との連携を図ってきた。今後もいじめや少年非行の問題について、弁護士・弁護士会と関係各機関の相互の協力体制を確立していく必要がある。

      (7) 犯罪被害者支援を目指す民間支援組織等への法的なアドバイザーとしての参加
      なら被害者支援ネットワークの構成員として児童相談所、ならいのちの電話、警察等との具体的な支援活動での連携を更にすすめる。
      今後、犯罪被害者支援活動を実施或いは目指すカウンセラー、精神科医、法廷付き添いボランティアを含めた民間の犯罪被害者支援組織が設立されれば、法的なアドバイザーとしてそれらに参加し、援助活動をしたい。

  2. 裁判所の充実
    司法の現状をさして「2割司法」と揶揄されることがある。これは、本来裁判所等の適正な手続によって解決されるべき紛争の内、2割程度しか適正に解決されていないということである。今いわれている司法改革の目的の第一は、このような現状を改革しようとするものである。裁判所を市民に利用しやすいものにし、且つ市民に期待される役割を果たせるようにするためには、人的な充実とそれを受け入れる物的充実も欠かせない。

    1. 裁判所の配置見直し
      現在の奈良地・家裁の本庁及び支部の所在地が決まったのは、裁判所構成法が公布された1890年(明治23年)である。本庁の沿革は1876年(明治9年)に設置された奈良区裁判所、五條支部は1877年(明治10年)に設置された五條区裁判所にまで遡ることが出来る。本庁庁舎には元興福寺別当一乗院宮橘御殿が、五條、葛城(高田)の庁舎には各代官所が当てられ、宇陀(松山)の庁舎は松山城城下町に建設された。
      他方、県内で最初の鉄道(奈良・王寺間)が開通したのが1890年(明治23年)である。その後、交通網や人口分布は大きく変わり、裁判所の配置が必ずしも適切と言えなくなっている。

      (1) 北和地域
      1. 家裁、簡裁の分離
        県内の裁判所の配置は図1-1のとおり著しく北に偏在している。しかし、前記第1、1②のとおり人口も偏っているから、地理的位置如何で直ちにその配置が適正を欠いているとはいえない。
        現在、地・家裁本庁、奈良簡裁庁舎の建て替え計画が現地で進められ2005年(平成17年)には完成予定である。
        新庁舎の概要について明らかにされていないが、同地は道路を挟み興福寺境内に面しているので、古都の歴史的景観保存の観点から、大容量の建物建築は不可能である。
        そうすると、新築後早々にも部屋不足に陥ると思われるので、調停を扱う家庭裁判所と簡易裁判所を独立させて他の場所へ移転する必要が生じるであろう。その場合、近鉄西大寺駅付近に置くことも十分検討されるべきである。

      2. 利用者の意見を採り入れた新庁舎建設を
        裁判所庁舎は、いうまでもなく市民の税金により建築・運営される公的施設であり、利用者である市民がその主役である。しかるに今回予定されている新庁舎建設は、弁護士会を含めた利用者の意見をほとんど聞くことなく計画が進められてきた。
        早急に現段階の計画内容を明らかにしたうえで、利用者の意見を聴取し、反映することが可能な意見は積極的に採用するべきである。

    2. 中和地域ー葛城支部の移転
      奈良地方・家庭裁判所葛城支部は、桜井市を越えてその東部まで広大な区域を有しており、多くの利用者が利用しやすいように配置されているとはいい難い。さらに中和地域の鉄道網と道路網を考慮すると、交通の要衝である橿原市八木付近への移転を検討すべきである。特に家庭裁判所は電車による利用がより多いと考えられることから、家庭裁判所のみを近鉄八木駅付近に置くことも十分検討されるべきである。

    3. 南和地域
      1. 五條支部について
        奈良地方・家庭裁判所五條支部は、その位置が事務分配区域の最西北端に過ぎることから五條市以外の住民、特に吉野川流域方面の住民にとっては利用しずらくなっている。今後、同方面の人口が増加し五條市や大塔、西吉野、十津川方面人口とのバランスがとれなくなった場合には、設置場所の見直しも必要となろう。
        現状では、次にのべるとおり、和歌山県橋本市や伊都郡住民も五條支部を利用できるよう管轄の見直しをすべきである。

      2. 宇陀簡裁の移転
        宇陀簡易裁判所は、現在、大宇陀町にあるが、電車による利用者にとっても自動車による利用者にとっても非常に不便である。そこで近鉄榛原駅付近に移転し、さらに奈良家庭裁判所の出張所を併設するのが相当である。

    4. 裁判所の管轄の見直し―二重管轄の提案
      裁判所の管轄区域の現状は、府県の区画によって土地管轄を定める形になっているが、そのことが地域住民の利用しやすさを阻害する理由になっているケースもある。そこで、裁判所を利用しやすくするため、奈良地方・家庭裁判所の管轄区域等につき、次の点を指摘したい。
      現在奈良地方・家庭裁判所の管轄区域は奈良県全域に止まっている。しかし前記(第1、4)のとおり、京都府相楽郡は奈良地方・家庭裁判所へ行く方が京都地方・家庭裁判所へ行くより、和歌山県橋本市及び伊都郡の一部地域は奈良地方裁判所五條支部へ行く方が和歌山地方裁判所へ行くより、橋本市は奈良家庭裁判所五條支部へ行く方が和歌山家庭裁判所妙寺出張所へ行くよりそれぞれ近い。
      そのような地域住民に民事・家事事件につき裁判所を利用しやすいものにするため、二重管轄地域として、同地域の住民に奈良の裁判所で裁判などをすることができるようにすべきである。
      逆に、奈良県内の十津川村、下北山村からは奈良地・家裁五條支部よりも和歌山地・家裁新宮支部または津地・家裁熊野支部へ行く方が近いので、同地域の住民には新宮または熊野の裁判所も利用出来るようにすべきである。
      以上の事項を実現するためには、裁判所の管轄に関する根拠法規である下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律及び地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則の改正をすべきである。

    5. 裁判所の事務分配の見直し
      現在の交通の状況や地域的な繋がりを考慮した場合、桜井市については奈良地方・家庭裁判所葛城支部の事務分配区域及び葛城簡易裁判所の管轄区域に含めるべきである。
      また奈良地方・家庭裁判所吉野支部が近鉄下市口駅付近に設置されるとすれば、同吉野支部の事務分配区域に吉野郡東吉野村を含めるべきである。

    6. 裁判所の人的拡充
      前にみたように、奈良地・家庭裁判所、各簡易裁判所の裁判官、書記官等の配置は、事件数の増加に十分対応出来ているとは言えない状況である。
      また、多くの裁判官が複数の裁判所を兼任し、裁判官不在も多い。開廷日が 少ない為に、裁判や調停の期日が入りにくい状態も解消されなければならない。
      調停は、裁判官が主任として関与すべきことになっているにかかわらず、現実には裁判官に時間のゆとりがなく、他の調停委員任せとなっている。家事事件については、調査官の調査も人員不足のために十分活用出来ない状態である。
      1998年(平成10年)度から導入された少額訴訟、2000年(平成12年)度から導入された特定調停の申立件数も全国的に増加傾向にある。また、同年から施行された新しい成年後見制度の利用者も、介護保険制度の導入、高齢化の一層の進行により増加すると思われる。
      以上のような状況に照らした場合、今すぐにでも裁判官・書記官・家裁調査官等の人員を、現行の2倍程度に増員する必要がある。将来事件数が急増すれば、それに応じた増員も必要である。

    7. 裁判所の物的拡充
      人員の増加は、当然執務室、法廷、調停室等の物的設備の拡充を伴わねばならないことになる。宇陀簡裁を除く県内各裁判所の物的拡充は急務である。
      奈良地・家裁本庁・奈良簡裁の建て替え計画が予定されているが、家裁、簡裁を別の場所に分離すべきことは先に指摘したとおりである。

  3. 裁判外ADRの充実
    紛争解決手段として訴訟が大きな役割を果たしてきたことは否定できない。しかし、訴訟については、手間、時間、金が掛かりすぎるとの批判がある。訴訟制度の改正や当事者の努力により改善される部分もあろうが、訴訟に対する不満を根本的に解消することは困難である。
    また、判決による解決は原則として100対ゼロの解決となるが、割合的解決が適当な場合もある。また、第三者も加わった解決策等多様な解決案があり得る。また、勝訴判決を得るために、当事者双方が徹底的に非難中傷をしあい、双方間の関係を一層悪くすることもある。裁判は公開であるが、公開に適さない紛争も多い。
    そこで、裁判の他に、簡易、迅速、低廉な紛争解決手段、双方にとって将来有益な解決、100かゼロではない紛争解決手段が求められることになる。更に、判決の場合、結論が出るまでに心証を明らかにされることが少ないが、調停・仲裁では話し合いの過程で専門家の考えが明らかにされ、訴訟になった場合等の将来予測が出来ることになる。それを基に当事者が妥当な解決をはかることが出来るとも言われている。

    1. 調停の充実
      わが国のADRとして最もよく利用されているのは、裁判所の民事調停、家事調停である。前記のとおり調停の長所の一つとして将来予測が出来ること、それを基に当事者の納得のゆく紛争解決が可能であると指摘されている。ところが、現実の調停、特に民事調停において、当事者に対し公正で妥当な情報が与えられていない等、調停成立に至る過程について適切さを欠くケースがあるとの指摘がある。 そこで、調停主任を含めた調停委員会に、事実を的確に把握する能力、正しい法的判断力、分野毎の専門知識、当事者の紛争解決意欲を引き出す等の調停能力を向上させる必要がある。

    2. 裁判所外ADR―仲裁センター
      現在、全国で10の弁護士会に「民事仲裁センター」ないしこれに類似するものが設置されている。各弁護士会における民事仲裁センターの現状を分析してみると、両当事者が期日に出席したような場合には6割以上の割合で最終的な解決に至っている。審理期間も、審理回数にして3回程度、概ね2~3か月程度で終了している。弁護士の代理人選任率も訴訟より低い、との傾向がある。
      ところで仲裁センターとはいうものの、解決の形式としては仲裁より和解によるものが圧倒的に多い。当事者が仲裁に応じるためには、事態の把握と将来予測が前提となり、逆にそれが出来れば適切な譲歩も可能となり和解が成立するからと思われる。
      裁判所の調停の他に仲裁制度が必要かどうかについて議論もあろうが、紛争解決についての経験が豊富であり且つ法的バックグラウンドを有する弁護士が仲裁委員をつとめるところに、仲裁制度を設置する意義がある。
      そこで、弁護士会においても「民事仲裁センター」の設置を準備している。

  4. 検察庁・矯正施設・保護施設の改善
    矯正・保護の分野は国家予算の日の当たらない場所で、施設の改善もままならなかった。バブル期には、いわゆる特別会計による施設改善が比較的容易であった。
    しかし、改善から取り残された施設の現状からは、改めて声高に叫ぶ必要がある。
    1. 刑事裁判・少年審判関係機関
      (1) 検察庁
      刑事事件の増加、少年保護事件への検察官関与制度、犯罪被害者保護制度の導入等を考慮すれば、検察の活動の場は拡大しており、それらに対応するためには検察官などの人員増加や施設の拡充が必要である。

      (2) 奈良少年鑑別所
      現庁舎は、1973年(昭和48年)に竣工したものである。当時に比べ、捜査官、家裁調査官、弁護士付添人等による取調、面接、接見回数の増加がみられ、それらのための部屋や、鑑別技術の進歩にともなう鑑別機器設置場所増を考えると、部屋数が不足していると推測される。
      また、収容者数の増加傾向や少年法の改正による収容期間の長期化から収容室の不足が推測される。
      改正少年法の施行に伴って、検察官立会事件についての集中審理が予想され、審判への出頭が多数回となると思われるが、現在の鑑別所の人員体制では少年の裁判所への出頭を確保できない。人員を増加すべきである。

    2. 施設内処遇機関
      (1) 奈良少年刑務所
      1908年(明治41年)に竣工した、刑法、監獄法の施行期の行刑水準を示す歴史的建物である。
      同時期に造られた刑務所の多くは既に全面改築されているので、我が国の行刑史上重要な建物である。
      しかし、近代的行刑施設への建て替えも必要であり、どのように両者を調和させるかが課題である。

      (2) 少年院
      少年法の改正にともない、建設当時には予想もされていなかった年少少年受刑者の入院が必至と考えられ、施設面でもそれに合わせた対応を迫られるであろう。

    3. 社会内処遇機関
      (1) 奈良保護観察所
      9名の保護観察官が584名の保護司を担当している。保護観察官を増員すべきである。 (2) 保護司制度
      ボランティアとして熱心に活動している保護司が少なくないことは評価できるが、年齢的、経歴的にいって、必ずしも有効な活動が期待できない保護司も少なくない。
      犯罪や非行についての経験があり、この問題に熱意のある人々こそ保護司になるべきである。
      弁護士自身ももっと保護司となり、更生への助力をすべきである。

  5. 自治体の関与
    地方自治法第1条の2、1項は地方公共団体の役割について「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものである。」と規定している。
    住民が自立して司法サービスを受けることについて適切な援助を行うことは、住民の福祉の増進に寄与するものであり、地方公共団体の役割に含まれる。 現在、多くの地方公共団体が、住民向けの無料法律相談、消費者相談を実施したり、弁護士会の南和法律相談センターの運営に補助金支出をされているのもそれ故である。

    自治体の法律相談の現状は、前にも指摘したとおり、多くのところで希望者が殺到し、相談時間が1人当たり長くて30分、短いところでは15分しか確保できていない。これだけの時間で十分な回答を行うことは不可能ではないが、相談者側としては、ゆっくり相談できないことへの不満を持たれるケースも存在する。

    今後、十分な時間確保等の質の向上も図る必要があろう。 更に、相談だけでは解決しないケースも多々あり、住民が相談を越えた司法サービスを受けることにも自治体が積極的に関与すべきとは思われる。しかし、国の役割との関係など十分な検討がなされていない点も残っていることから、今後の課題としたい。
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