奈良弁護士会

0742-22-2035
会長声明

「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

2004/07/21

奈良弁護士会
 北岡 秀晃

第159回通常国会に上程されていた「民事訴訟費用等に関する法律の一部を改正する法律案」は、衆議院において継続審議となった。本法案は、これまで訴訟費用とされなかった弁護士費用について、訴訟係属中に、訴訟代理人を選任している当事者双方の共同の申立があったときに、その一部を訴訟費用に含めて敗訴者の負担とすることを認めるものである。

日本弁護士連合会及び奈良弁護士会は、一般的な弁護士報酬敗訴者負担制度は経済的、社会的弱者にとっては裁判利用を萎縮させるものであり、司法アクセスを促進させる司法改革の理念に反するとしてこの制度の導入に強く反対してきた。本法案が定める「訴訟当事者の合意による弁護士報酬敗訴者負担制度」も、敗訴者負担制度の弊害を払拭するものではないし、合意するかどうかが裁判所の心証に微妙な影響を与えかねず、当事者が合意を心理的に強制されるおそれもある。

しかも、訴訟上の合意としての敗訴者負担が導入されると、定型契約書や約款で、予め「この取引に関する裁判では敗訴した者は勝訴した者の弁護士報酬を負担する」との条項を盛り込むことが可能との理解を生み出し、契約上の敗訴者負担が広がることが懸念される。そうなれば、消費者や労働者、中小零細企業など契約上弱い立場におかれる者をして訴訟によって権利主張することを躊躇させ、司法アクセスに重大な萎縮効果をもたらしかねない。

このような重大な弊害を生じさせないためには、少なくとも消費者訴訟・労働訴訟等においては、合意による敗訴者負担制度を適用しないものと明記する必要がある。そして、消費者契約、労働契約(就業規則を含む)、一方の取引上の地位が他方に優越している事業者間における私的契約についても、弁護士報酬敗訴者負担の定めは無効とする旨の立法上の措置を講じなければならない。

奈良弁護士会は、市民の司法アクセスを保障する観点からは、法律扶助制度の抜本的拡充と行政訴訟や公害・消費者訴訟等への「片面的敗訴者負担制度」の導入こそ検討すきであると考える。このような点に配慮することなく、また上記立法上の措置が講じられないまま合意による弁護士報酬敗訴者負担制度を導入する本法案が成立することには絶対に反対である。来るべき臨時国会において、本法案を廃案とすることを強く求めるものである。

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