奈良弁護士会

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会長声明

共謀罪新設に反対する会長声明

2005/11/17

奈良弁護士会
 福井 英之

当会は、第163国会(特別会)に提出されている「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」第2条(組織的な犯罪の処罰に)「組織的な犯罪の共謀」の新設に反対する。

この共謀罪は、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織」により行 われる犯罪の遂行を共謀した者で、その犯罪が死刑無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪、あるいは長期4年以上10年以下の懲役 又は禁錮が定められている罪にあたる場合にこれを処罰しようとするものである。共謀罪は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を国内法化するための規定である。

しかし、この法律案には次のような重大な問題点がある。<

  1. 単なる日常会話も処罰の対象となりうる危険性がある。
    共謀罪は、実行行為に着手する以前の予備行為も要件とされておらず、犯罪実行の合意という外形があれば共謀と見なされ、同罪が成立すると見なされる可能性がある。単に思っていること、言うことと、それを行動に移すことは全く別のことであ る。ところが、共謀罪により、日常生活において何気なく交わされる犯罪にかかわる会話さえもが、当事者にそれを本気で実行する意思がなくても当該犯罪を実行したものに類する形で処罰の対象となる危険性がある。

  2. 処罰範囲が極めて広範になる危険性がある。
    法務省は、「組織的な犯罪の共謀罪」には、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰すると主張しているが、法律案上は「団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われたものの遂行を共謀した者」と規定されているに過ぎない。

    上記条約上、対象となる犯罪が「性質上国際的なものであること」、「組織的な 犯罪集団」の関与するものであること等の要件が必要とされているのと対比しても、 共謀罪の規定が適用される組織、団体について明確に限定された定義がないため、処罰の対象となる組織、団体は広範にならざるを得ない
    また、対象犯罪は、長期4年以上の懲役又は禁錮にあたる重大な犯罪が対象となっているため、対象となる罪名は550を超えるといわれており、その対象となる犯罪は極めて広範である。

  3. 捜査方法が無限定に拡大する危険性がある。
    共謀罪の捜査については、客観的、物的な証拠がなく、捜査機関の捜査に困難を来すことが予想され、そのため、通信傍受法の適用が拡大される等、電話等の通信手段の傍受が捜査の名において拡大する危険性がある。

  4. 憲法上の権利、自由の制限の危険性がある
    以上のような様々な問題点に鑑みれば、共謀罪は、国民の自由な表現活動、団体 結社、宗教活動など、憲法上保障された権利、自由に対する不当な制限を課する手段 となる危険性を内包すると言わざるを得ない。

以上のような理由により、当会は共謀罪の新設に強く反対するものである。

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