奈良弁護士会

0742-22-2035
会長声明

全面的国選付添人制度の実現を求める会長声明

2010/06/22

奈良弁護士会
会長 朝守 令彦

  1. 弁護士付添人は,少年審判手続において,非行事実の認定や保護処分の判断が適正に行われるよう,少年の立場から手続に関与し,家庭や学校・職場等の少年を取り巻く環境の整備を行うなど,立ち直りを支援する活動を行っている。このような弁護士付添人の存在は,少年に対し適正な手続きを保障し,少年審判を適正なものとするだけでなく,少年が更生をするうえでも極めて重要である。

    そのような観点から,わが国も批准している子どもの権利条約は第37条(d)において,「自由を奪われた全ての児童は,…弁護人(及び)その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有する」と規定し,身体拘束を受けた少年には必ず弁護士と接触する権利が保障されなければならないとしている。

    しかしながら,現実には多くの場合,少年には弁護士付添人の費用を負担するだけの資力はなく,保護者からの費用支出も容易には得られないため,国費により弁護士付添人を付する制度がなければ,少年が弁護士付添人の援助を受ける権利は実質的に保障されない。

  2. 現状の弁護士付添人の選任率は低く,身体を拘束された事件の約40%のみであり,そのうち国選付添人にいたってはわずか約3.7%に過ぎない(2008年統計)。成人の刑事事件における弁護人選任率が98%以上であることと比較すれば,少年に対する法的援助は著しく不十分な状況である。

    このように弁護士付添人選任率が低い原因として,2007年11月に導入された国選付添人制度が,対象事件を重大事件に限定し,かつ,付添人選任の要否は家庭裁判所の完全な裁量によるものとして,極めて限定された制度となっていることが挙げられる。
    しかも,2009年5月21日以降,被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大された結果,多くの少年事件で,被疑者段階で国選弁護人が選任されるようになったにもかかわわらず,家裁送致後には国選付添人となることができないという看過し難い制度上の問題も生じている。

  3. 日本弁護士連合会は,全ての弁護士会員が拠出する特別会費に基づく少年・刑事財政基金を財源として,弁護士費用を支払えない少年に私選付添人の費用を援助する少年保護事件付添援助制度を実施してきた。

    また,当会では,2006年2月1日より,観護措置決定時に16歳未満の少年について,少年が希望すれば無料で弁護士が面会し,少年が拒否する場合を除き上記援助制度を利用するなどして受任し付添人活動を行う「少年付添人制度」を実施してきた。
    さらに,被疑者国選弁護制度の対象事件拡大後も,2009年6月からは,被疑者国選弁護人が付添人とならない場合に,上記援助制度を利用するなどして,事件を引き継ぎ,付添人となる弁護士を指名する「引き継ぎ付添人」制度を設け,2010年6月には,「少年付添人制度」の対象年齢の制限を撤廃し,身体拘束された全ての少年へと対象を拡大した。

  4. しかしながら,心身ともに未成熟である少年に対し,捜査から審判に至る一連の手続において,適正な手続きを保障し,更生の支援をするという法的援助を与えることは,本来,国の責務である。
    国による少年への法的援助が成人に対するものよりも不十分である現状は,一刻も早く改善されなければならない。とりわけ,少年鑑別所に収容され身体を拘束された少年については,事件の軽重を問わず,その生育歴・家庭環境にも大きな問題を抱えたケースが多いこと,少年院送致などの重大な処分を受ける可能性が高いことから,国選付添人による法的援助を受けられるよう早急に制度を整えなくてはならない。
    よって,当会は,国会及び内閣に対し,現行の国選付添人選任制度の対象事件を拡大し,少なくとも観護措置により身体を拘束された全ての少年について,国の責任で,国費により弁護士付添人が選任される制度とすることを早急に実現するよう求める。

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