奈良弁護士会

0742-22-2035
意見書

提携リース取引を規制する法律の制定を求める意見書

2012/05/11

奈良弁護士会
会長 山﨑靖子

意 見 の 趣 旨


第1 提携リース契約において,極めて不適切な勧誘,不適切・不合理な契約により多数の被害が生じている現状に鑑みて,これを適切に規制する次の内容の立法措置を至急行うことを求める。

  1. リース会社とサプライヤーとの一体的取扱い
    販売店(以下「サプライヤー」という)がユーザーに対して行った説明は,リース会社が行ったものとみなすとする明示の規律を行うことおよび,ユーザーがサプライヤーに対して有する抗弁権はリース会社にも主張できるものとすること

  2. リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止
    リース会社は,リース物件(リース契約の対象物件)の市場調査義務を負い,これを著しく超えるリース料総額となるリース契約の締結を禁止すること
    リース物件が市販されていない場合,同様の用途とする他に容易に入手し得る物件に比して価格が高額であるならば,それが高額である事実及び特にその比較において高額な物件をリース物件とする理由を明示すること
    物件価格が不適切であったり,リース契約の対価に役務提供の費用が実質的に含まれていたりした場合には,ユーザーは,当該リース契約を取り消すことができるものとすること

  3. リース物件の限定
    リース物件は,動産およびソフトウェアに限られるものとし,役務をリース物件とはできないことを明示するとともに,実質的にリース料に役務提供の対価を含める扱いを明示的に禁止すること

  4. 残リース料上乗せリースの禁止
    既存のリース契約の解約を伴う場合において,その残リース料その他残リースを精算するための費用を,新リース契約のリース料に上乗せすることを禁止すること

  5. リース料率の規制
    リース料率の適正な制限利率を設けること

  6. 契約内容の適切な開示義務
    リース会社およびサプライヤーは,リース契約の内容についての概要書面および契約書面作成交付義務を負い,その中で,リース物件の名称及び価格,ならびにリース料率,損害保険費用その他の附随費用を加えたリース総額,中途解約の可否その他割賦販売および賃貸借に比してユーザーに不利な事実を説明する義務を負うものとすること

  7. クーリング・オフ
    ユーザーは,前項に定める書面を受領した後相当期間はリース契約のクーリング・オフができるものとすること

  8. 不招請勧誘禁止
    リース契約についての不招請勧誘を禁止するとともに,違反した場合ユーザーはリース契約を取り消すことができるものとすること

  9. 行政ルールの導入
    提携リースについては,割賦販売に準じ,経済産業省または消費者庁への届出・登録義務を課すとともに報告徴求,立入検査,業務改善命令等の行政ルールを導入すること

第2 併せて,法制審議会における民法(債権法)改正の検討作業において,提携リース被害について考慮がされないままに,ファイナンスリース契約が典型契約として規定されることのないよう,慎重に議論を行うことを求める

意 見 の 理 由


第1 提携リースとは

提携リースとは,販売店(以下,「サプライヤー」と呼ぶ)とリース会社との間に業務提携契約その他事実上又は法律上の提携関係があり,サプライヤーがリース契約締結の交渉・申込手続を代行するリース契約のことをいう。
リース契約の特質はいわゆるファイナンス・リースと同じであるところ,ファイナンス・リースと異なりユーザーが契約の特質に習熟していないこと,サプライヤーの行為の影響を受けやすいことに加え,割賦販売や貸金にみられる法規制が存在しないことが,後に述べるような被害を生み出す構造となっている。

第2 提携リース被害の実態 

  1. 被害事例の特徴
    まず,訪問販売の手法により不意打ち的にリース契約を締結させようとするものが多い。
    また被害者の多くが個人事業主であり,リース契約の特質や事務用品の知識については一般消費者と変わらない,ケースによっては高齢のため一般消費者よりも劣るケースさえ珍しくない。
    この2点が相まって,他の契約形式(現金売買,割賦販売,レンタル)や,他の同種機器(性能面,価格面)との比較をさせないで契約に持ち込ませている。
    そして,リース契約上途中解約は禁止となっているのが通例であり,被害ユーザーは被害に気付いた後も損害を回避することがリース会社との関係では法律上困難となっているのが,他の契約形式との比較において際立った特徴である。
    リース物件については,従来は電話機が中心であったが,近年はホームページ,セキュリティ関連機器などとする事例が発生している。

  2. 電話機リース被害の例
    サプライヤーの従業員が,消費者,または法的知識やリース契約についての知識,事務用品についての知識が消費者と全く異なるところのない零細事業者宅や廃業した元事業者宅を訪問し,「今の電話機は使えなくなる」「電話機を変えれば電話料金が安くなる」などと虚偽の事実を告げ,全く必要がない,もしくは業務の必要性に比して明らかに過大な物件のリース契約を締結させられた。物件の定価は告げられなかった。後日になって,リース料が過大であること,物件の必要性がないこと,電話料金が変わらないことなどが判明したが,リース会社に申し出ても,サプライヤーはリース契約に関係ないなどと言って取り合ってもらえないと言ったものである。

  3. ホームページリース被害の例
    サプライヤーの従業員が「貴店のホームページを作成しませんか」と訪問して勧誘する。そのセールストークは「ホームページ作成無料」というものであり,申し込むと形式上は,ホームページ作成ソフト,パソコン,デジタルカメラなどのリース契約を締結させられる。
    しかし,当該ソフトその他の商品は市販品と大きな差のないものであり,市場価格はせいぜい数万円程度である。これらの品物についてサプライヤーは,実質的にはホームページ作成という役務の対価としてリース契約をしている。契約後,サプライヤーがホームページ変更をしない,あるいは倒産してホームページ改良サービスが受けられなくなったためユーザーが解約を申し出ると,「契約上はソフトのリースであり,サプライヤーの勧誘行為はリース会社とは関係ない」などとして解約に応じないといったものである。数万円のソフトのため,事案によっては総額100万円を超える支払を継続させられる例が報告されている。

第3 立法の必要性

  1. 司法的救済の限界
    サプライヤーに対して不法行為等で被害救済を求めても,このような業者は資力を欠くのが通例である。
    そのため,リース会社に対し,代理,使者,共同不法行為等の法律構成で救済を求めても,サプライヤーとリース会社との内部関係を立証することは困難で,容易にリース会社の責任は認められないため,リース会社にサプライヤーを規制する動機づけが働かないのが現状である。

  2. 立法が救済に効果的であること
    いわゆる電話機リース被害の際に,従前,ほとんど事業者としての実体のない場合であっても特定商取引法による救済が困難であったことが認識された結果,経済産業省は同法にかかる通達を以下のとおり改めたと言うことがあった。
    すなわち,「本号(特定商取引法第26条第1項第1号のこと)の趣旨は,契約の内容・目的が営業のためのものである場合に本法が適用されないという趣旨であって,契約の相手方の属性が事業者や法人である場合を一律に適用除外とするものではない。(以下略)」とする旨通達した。
    その結果,被害の現場において特定商取引法が機動的に活用されるに至り,多数の被害が救済されることになったものである
    以上の例は,法律の行政解釈の変更によるものではあるが,提携リースによる被害の救済を立法的措置によって行うことが極めて効果的である事実を裏付けるものである。

  3. 必要とされる立法

    (1)民事規制
    ア)リース会社とサプライヤーとの一体的取扱い
    勧誘にあたってサプライヤーが行った説明・行為をリース会社が行ったものとみなす規定を設け,サプライヤーが不適切な勧誘・契約をしたことによるリスクをリース会社に負担させることによりリース会社に不適切なリース契約をさせない動機づけとするべきである。サプライヤーの存在は,主に比較的小口の物件を対象とする提携リース契約には不可欠であるところ,サプライヤーとリース会社とは密接な関係を有するものであることが明らかである以上,上記のような扱いも許容される。
    また同様に,ユーザーのサプライヤーに対する抗弁事由をもってリース会社にも主張することを可能とし(抗弁の接続),サプライヤーの債務不履行によるリスクをリース会社に負担させる規定も必要である。

    イ)リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止
    これについては,一部については,暴利行為として無効とされる可能性もあるが,無効となる基準を明確にしてより簡易迅速な救済を可能とするべきである。
    リース会社は相応の規模を有する大企業である場合が多く,このような義務を課しても不合理であるとか正常なリース取引を委縮させるといった弊害は考えられない。

    ウ)リース物件の限定
    「役務」をリースの対象とすることを認めた場合,サプライヤーの倒産等で「役務」が提供されなくともユーザーは対価の支払いを免れないと言う事態を招来すると言う強い懸念がある。結果的に暴利行為を行うことも可能となるため,これを一律に禁止するものである。

    エ)残リース料上乗せリースの禁止
    上乗せリースは,実際にも,例えば,いわゆる「次々販売」において,悪徳業者が,ユーザーに気づかれないように,ユーザーに高額な債務を負わせる手段として用いられたという実態がある。
    そこで,これについては禁止すべきである。

    オ)契約内容の開示・説明義務
    ユーザーにとって,当該物件を使用するにあたって,リース契約以外のその他の契約形態によった場合にどうなるのか等に関して,比較検討の機会を与えられなくてはならない。特に現在の提携リース契約にかかる契約書においてはリース料総額の内訳が記載されておらず,この比較検討は極めて困難である。
    そこで,具体的には,サプライヤー及びリース会社に対し,(1)リース物件の名称,価格,(2)損害保険,設置費用その他の附随する費用の存否及びその価格,(3)リース物件がソフトウェアであり,同種市販品より著しく高価である場合には,その理由,(4)中途解約の可否,(5)クーリングオフが可能であること及びその期間,の記載および説明を義務付けるべきである。

    カ)不招請勧誘の禁止
    既に述べたとおり,提携リース被害は訪問販売の方法によるものがその圧倒的多数を占め,なおかつ訪問販売被害の場合密室で勧誘がされる結果説明義務違反の主張が困難であるという実態がある。
    加えて,リース契約によりユーザーは長期間,通例は解約不能な支払義務を負うことになるのであるから,物件等の必要性や事業に即しているか,同種物件等の価格,支払義務を負担することの経営への影響の存否等を十分検討した上で判断することが必要不可欠である。
    一方で,不招請勧誘によることを認めるべき正当な利益はおよそ存しないのである。
    そこで,提携リース契約においては不招請勧誘を禁止し,これに反する態様の勧誘行為がなされた場合には,ユーザーに取消権が認められるべきである。

    キ)クーリング・オフ
    ユーザーは前述した契約書面を受領した後一定期間は,リース契約のクーリングオフができるようにするべきである。前述した熟慮を欠く契約による被害が頻発している現状に鑑み,必要不可欠である。

    (2)行政規制
    以上の規制を実効性あるものとするため,リース会社の登録制および違法行為のあるリース会社への営業停止その他の行政処分を可能とするべきである。

  4. 民法(債権法)改正との関係
    なお,現在,法制審議会において,民法(債権法)改正に向けた議論が行われており,民法(債権法)改正検討委員会が作成した「債権法改正の基本方針」においては,ファイナンス・リース契約を典型契約として民法典に記載するとの提案がなされている。
    しかしながら,「債権法改正の基本方針」には,リース契約の基本形のみが記載されているだけで,提携リース取引が被害の温床となっていることについては何ら考慮されておらず,立法としては極めて不十分である。むしろリース契約にいわばお墨付きを与え,提携リース被害を拡大しかねない。
    そこで,民法(債権法)改正にかかる議論においては,提携リース被害の実態を直視し,これを十分踏まえたものとされなければならない。

第4 終わりに
以上のとおり,深刻な提携リース被害の速やかな救済のため一刻も早い立法による解決を求める。

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