奈良弁護士会

弁護士費用敗訴者負担に反対する意見書

奈良弁護士会

 

2001年11月20日に出された司法制度改革審議会の「中間報告」において、「弁護士費用の敗訴者負担制度」を導入する方向が盛り込まれた。
しかし、この制度は一般市民を裁判ないし司法から遠ざけるものであり容認できない。

つまり、敗訴者負担制度は「弁護士報酬の高さから訴訟に踏み切れなかった当事者が訴訟を利用しやすくなる」ものと説明している。しかし、裁判提訴時において、予め勝訴判決の見通しを立てることが困難なケースは数多く存在する。
にもかかわらず、敗訴時に相手方の弁護士費用まで負担させられるとすれば、当事者は裁判提起に不安を感じ、結局提訴を諦めることにもなりかねない。 
この事実は、同制度が歴史的に濫訴抑制の手段として論じられてきたことからも明らかである。

特に、消費者訴訟、公害訴訟、医療過誤訴訟、行政訴訟、労働訴訟などにおいては、手持ちの証拠が少ない状態で、大企業や行政などを相手に敢えて提訴するといった形態の訴訟が多く、このような訴訟では一段と弁護士費用の敗訴者負担による訴訟提起への障害が著しいものとなる。その結果、経済力に乏しい者は、仮に人権を侵害されたとしても司法に救済を求めることが事実上非常に困難なものとなり、一方で経済力のある者のみが縦横無尽に裁判制度を利用できるといった事態にもなりかねない。

奈良弁護士会は、「市民のための司法」、「市民に利用しやすい司法」を掲げる司法改革に逆行する同制度の導入には断固として反対する。

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