奈良弁護士会

求人情報サイトへの無料広告掲載の勧誘にご注意ください

2022年(令和4年)9月21日

奈良県内の事業者様 各位

奈良弁護士会            
会 長  馬場 智巌
同消費者保護委員会         
委員長  皐月 宏彰
同中小企業法律支援センター運営委員会
委員長  加藤 文人

第1 事案の概要(被害の状況)

コロナ禍が続く最近の状況において、人手不足は著しく、事業者の皆様は求人に苦労されていることと存じます。
数年前から、全国で、中小企業等の事業者様に対し、「当社が管理しているインターネット上の求人情報サイトで、貴社についての求人広告を無料で掲載します。3週間は無料です。」等と電話、電子メール、FAX等で勧誘し、所定の「申込書」を提出させて、専用のウェブサイトに当該事業者様の求人広告を掲載し、後日に「無料掲載期間が経過しました。」「期限までに所定の申出をいただけなかったので、有料広告として契約更新されました。」「求人情報サービスの掲載料等として、3か月分33万円を請求します。」等と主張し、比較的に高額の料金を請求してくる事案が発生しております。
現在も、複数の名称の業者が東京都内等を拠点として活動しており、それらの関係は不明ですが、基本的な手口は、「複雑な内容の規定を別紙として案内した上で、『有料で契約更新となることを防止するための解約通知をする方法』等を通常人には判別が難しい独自の方法(例:①一見しても、それとは分からない題名で、電子メール、FAX、郵便等を送付して来る。②期限の直前に通知して来る等)でもって通知し、このような業者所定の手続を実施できなかった事業者様に対し、後日に高額の料金を請求して来る。」というものです。
奈良県内の事業者様に対しても、最近に、このような業者(複数)が活発に活動し、勧誘、請求等をしていることが確認できました。

第2 検討(対策、対応)

  1. 比較的小規模な事業者様は、特にご注意ください。
    個人である消費者の場合は、各種消費者法において様々な保護手段が用意されており、クーリングオフ制度、不利益事実の不告知による誤認の場合の取消し、消費者の不作為をもって承諾とみなすような不当な条項の無効等があります。
    しかしながら、法人や個人事業主である事業者様の場合、形式的判断としては、消費者法による保護が直ちには及ばないと考えられるところ、実体としては消費者と大差ないともいえる比較的小規模な事業者様を主な対象として、このような手口が考案され、横行しているものと思われます。
  2. このようなウェブサイトに求人の効果がないこと、裁判例
    もっとも、これらの業者が管理しているという求人情報サイトは、基本的に一般人、求職者がインターネット上で検索しても、容易には到達できないものであり、このようなウェブサイトへの掲載に求人広告としての実際の効果があるとは、到底思われないものです。
    そのため、裁判例でも、例えば東京地裁令和元年9月9日判決は、「本件サービスには求人広告としての実体はないものと評価せざるを得ない。」「原告(*当該業者)は、専ら無料広告掲載期間内に解約しなかった顧客(*中小企業等の事業者、被告)に、広告料を支払わせることのみを目的として、本件契約を締結しているものと言わざるを得ないから、本件契約は、公序良俗に反し無効である。」と、民法第90条(公序良俗)に基づき、契約無効と判断して、このような業者からの求人情報サービス利用代金請求を全部棄却しています。

第3 結論(弁護士会、弁護士にご相談ください。)

実際の状況は、事案によって様々であり、日々変化しているのですが、各位におかれましても、人手不足に付け込んだ、このような手口に十分にご注意いただき、また、もしも何らかの被害等に巻き込まれた場合は、すぐに弁護士会(ひまわりほっとダイヤル:0570-001-240、当会直通:0742-25-2400)、弁護士にご相談ください。

以上


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