奈良弁護士会

司法修習生の給費制を1年延長する「裁判所法の一部を改正する法律」成立についての会長声明

奈良弁護士会
会長 朝守令彦

 

2010(平成22)年11月26日、司法修習生に対する貸与制の施行を延期する「裁判所法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立した。この結果、新第64期司法修習生に対して、従前の制度と同様の修習費用の給費が実施されることとなった。

今回の法改正は、当会が求めていた給費制の完全な復活とはならなかったものの、これまでの当会の運動方針に沿うものである。この法改正のための活動にご協力いただいた市民の皆様、問題の本質をご理解いただき、裁判所法の改正にご尽力いただいた各政党及び国会議員の皆様、その他関係の皆様に心より感謝申し上げる。

ただこれで問題が解決したわけではない。今回の法改正は、今後一年間、給費制を延長するものであるが、衆議院法務委員会は、2011(平成23)年10月31日までの間に、政府と最高裁判所に対し、(1)「個々の司法修習修了者の経済的な状況等を勘案した措置の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること」、(2)「法曹の養成に関する制度の在り方全体について速やかに検討を加え、その結果に基づいて順次必要な措置を講ずること」という附帯決議を行った。これらの検討事項は重要な事柄であるが、その検討結果いかんにかかわらず、給費制は維持・存続されるべきである。

法曹(弁護士、裁判官及び検察官)は、国が市民のため、予算を支出しても養成すべき社会資源である。したがって、国が司法修習生に対する給費を放棄し、法曹を志望する者が経済的状況等によりその志を断念せざるを得なくなるような制度は、もはや市民のための法曹養成制度とは言えない。

当会は、司法修習生が精神的にも経済的にも安定し、充実した司法修習に専念でき、その結果として、市民のための法曹としてスタートを切ることができるよう、今後とも給費制の維持・存続を求めていく所存である。

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