奈良弁護士会

ロシアによるウクライナへの侵略に抗議しつつ冷静な議論を呼びかける会長談話

2022年(令和4年)4月25日
奈良弁護士会 会長 馬場 智巌

  1.  2022年2月24日から、ロシアによるウクライナへの大規模な武力攻撃が続いている。これは、国連憲章51条の集団的自衛権行使を含め、国連憲章が定めるいかなる例外にもあてはまらず、国連憲章2条4項の武力不行使原則に違反する明白な侵略戦争である。しかも、ロシアは、ウクライナ国内の原子力施設や民間病院まで武力攻撃の対象とし、国際人道法を完全に無視しているばかりか、核兵器による威嚇まで行っている。かかる違法な武力攻撃により、ウクライナ国民に多大な人的・物的被害が生じていることは言うまでもなく、平和のための国際法秩序そのものが脅かされている。
     これを受け、同年3月2日には、国連総会緊急特別会合が開催され、圧倒的多数(賛成141、反対5、棄権35か国)が、この戦争が違法であると断定し、ウクライナでの武力行使停止、ロシア軍の、即時、完全、無条件撤退をロシアに求める非難決議に賛同した。
     戦争は最大の人権侵害である。二度の世界大戦を経て、不十分とはいえ、全ての武力行使を原則違法とし、力は正義であるとの価値観を克服してきた歴史を逆行させてはならない。かかる立場から、当会も、上記決議の内容に賛同するものである。
  2.  ロシアによる侵略を受け、わが国でも安全保障についての関心が高まっている。
    ただ、議論にあたり忘れてはならないのは、わが国の憲法では98条2項により国連憲章をはじめとする国際法の遵守が義務づけられているとともに、種々の意見がある9条についても、侵略戦争を禁じた9条1項まで改正しようという議論はないことである。
     なるほど、北東アジアにおいて軍事的緊張が高まっていること、必ずしも国際法遵守の姿勢が各国に共通していないことは事実である。しかし、軍事的緊張が高まれば戦争のリスクも高まる。わが国が率先して国際法遵守の姿勢を貫くことが平和と安全のために必要と考え、安全保障について冷静な議論が行われることを期待して、本談話を発表する。

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