奈良弁護士会

民事法律扶助事業に対する抜本的財政援助を求める決議

  奈良弁護士会

 

平成12年10月1日より施行されている「民事法律扶助法」は、民事法律扶助事業の統一的な運営体制の整備と全国的に均質な遂行のために必要な措置を講ずることを国の責務とするとともに、民事法律扶助事業の全国的に均質な遂行の実現に努めることを指定法人の義務としています。

しかし、民事法律扶助事業に対する国庫補助は到底十分とは言えず、平成13年度においては、資金難のため、奈良をはじめとする多数の財団法人法律扶助協会の支部が、正式決定を年度を超えた平成14年4月以降とする、利用を制限する、受付窓口を閉鎖するといった対応をとらざるを得ない事態に陥りました。一方で、民事法律扶助事業の援助件数、特に代理援助は、平成12年度の約2万件から平成13年度は約2万9800件と大幅に増加し、平成14年度には約4万件に達するものと予想されています。にもかかわらず、国は、平成14年度の民事法律扶助事業について、財団法人法律扶助協会の66億円余の国庫補助金の要望に対して、約30億円の予算措置(平成13年度から9000万円弱の増額)しか講じませんでした。

このような予算措置では、民事法律扶助事業における代理援助は、平成14年度においても、財源不足のため、一定の制限を受けたものにならざるを得ず、現に奈良支部においても、四半期毎の件数制限のため正式決定を7月以降に持ち越し、さらに自己破産代理援助については資力要件を厳しくするという措置をとらざるを得なくなっています。

そもそも民事法律扶助制度は、国民に憲法32条の「裁判を受ける権利」を実質的に保障するための制度であり、司法制度改革審議会の意見書(平成13年6月)も、我が国の法律扶助制度が欧米諸国と比べてなお不十分であることを指摘し「民事法律扶助制度については、対象事件・対象者の範囲、利用者負担の在り方、運営主体の在り方等について、更に総合的・体系的な検討を加えた上で、一層充実すべきである」と述べているところです。

国民にとって利用しやすい司法の実現を掲げる司法制度改革にあって、民事法律扶助の拡充は重要な意義を有するものです。現に法的援助を求める多数の国民が存在するにもかかわらず、それを財源不足を理由に放置することは、民事法律扶助法に定められた国の責務を放棄するに等しいばかりか、現在国を挙げて取り組んでいる司法制度改革の基本理念にも反するものと言わざるを得ません。

よって当会は、国に対し、民事法律扶助制度の意義を再確認し、補正予算を計上するなど民事法律扶助事業に対する必要な財政措置をすみやかに講じるよう強く求めます。

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