奈良弁護士会

報告書「奈良の家庭ごみを考える」

第1 はじめに

  1. 生活の利便性向上とごみの排出
    私たちの生活はどんどん便利になってきた。飲料水を例にとってみてみよう。現在の中年以上の大人が子供の頃は、ジュースなどの飲料水はビンで売られていたので、それを店先で買って飲み、ビンをお店に返した。遠くに遊びに行くのに飲み物を持っていきたいときはあらかじめ水筒に水やお茶、ジュースなどを入れて持参した。いつ頃からだろうか。自動販売機が普及し、人の集まるところなら、たいてい飲料水の自動販売機が設置されるようになった。そのため、一層手軽に飲料水を買って飲むことが可能になった。さらに、壊れにくくキャップも付いて、持ち運びが便利なペットボトル容器が使われ出すと、私たちはペットボトルに入った飲料水を買ってこれを持ち運び、好きなときに好きな場所で好きな飲み物を手軽に飲むことができるようになった。ペットボトルの便利さから、缶よりもペットボトル入りの飲料水を買う人が増えたせいか、ペットボトルの生産は年々増加している。こうしたペットボトルは大量にごみとして捨てられてきた。
    飲料水を例に、私たちの生活の変化を指摘したが、このほかにも大量に生産され捨てられてきたものは身の回りに沢山ある。家電製品、自動車、建築物から食品を入れたり包んだりするラップやトレイ、生ごみまで様々なものを挙げることができる。
    私たちは、毎日大量のごみを出しながら生活しているといえる。
  2. ごみの行方
    このように大量生産されたものの多くは最終的にはごみとして捨てられ、廃棄物として処理される。
    わが国では、廃棄物は破砕、焼却、乾燥、中和等の中間処理を経て、または直接最終処分場に埋め立てられるという方法で処分されてきた。
    中間処理の段階では、日本の場合、大量の都市ごみを焼却しており、欧米に比べその焼却率は格段に高いといわれている。著しく焼却に偏した処理が、ダイオキシン等の発生や二酸化炭素の大量排出につながっているという指摘がある。例えば、大阪府豊能郡能勢町の例は広く知られている。
    最終処分の段階では、処分場からの周辺環境への汚染が指摘されている。例えば、管理型処分場の設置された東京都日の出町では、処分場周辺から高濃度のプラスチック添加剤、重金属類が検出された。管理型処分場では遮水材として使用されているゴムシートが筍の成長で破損した例やダンプカー等の走行の重量のひずみでシート端が引っ張られて破損した例があり、現在の管理型処分場の構造自体に欠陥があると指摘されている。
    さらに、これら廃棄物処理場は、私たちに飲料水を供給する水源地の近くに立地していることが少なからずあると言うことも忘れてはならない。
    こうした廃棄物処分場の実態を反映して、新たな廃棄物処理場の建設反対運動、建設禁止を求める仮処分等の裁判が全国各地で頻発した。廃棄物処理場の建設が困難になる一方で排出される廃棄物の量は増加し、廃棄物処理場として、貴重な動植物の生息する藤前干潟のような場所の埋立さえ具体的に検討されるに至った。
  3. リサイクルの必要性と法制化
    このような事態に至ってごみの減量化が急務の課題となり、1995年(平成7年)6月に「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(以下「容器包装リサイクル法」という)が制定された。ごみの中に占める容器包装廃棄物の割合は高かった。厚生省(当時)の調べでは容積比で55・5%、重量比でも22・6%が容器包装廃棄物であるため(厚生白書平成12年版参照)、そのリサイクルが進めばごみの減量化が図れる。容器包装リサイクル法の成立の背景には、資源の再生利用の促進及び循環型社会の確立ということのほかに、従来、廃棄物として処理されていた容器包装ごみをリサイクルのシステムに乗せることで、廃棄物の量を減らすという目的があった。言い換えれば、ごみの減量化と環境保全の切実な要請があったといえる。
    容器包装リサイクル法が施行され、ペットボトルの回収システムが確立し、大量のペットボトルが回収されて様々なリサイクルの過程を経て、様々なものに生まれ変わる。最近ではペットボトルをリサイクルして新たにペットボトルを作り出す技術も生まれてきた。
    パソコン、家電製品などが大量に生産される反面、資源有効利用促進法(2000年(平成12年)5月制定、2001年(平成13年)施行)、家電リサイクル法(1998年(平成10年)5月制定、2001年(平成13年)4月施行)などにより回収・再資源化対策等のシステムが一応確立しつつあり、リサイクルも進みつつある。
    自動車については、通産省によって、廃車に関連する法令やガイドライン等を体系的に組み合わせた包括的政策パッケージである、「使用済み自動車リサイクル・イニシアティブ」(1997年(平成9年)5月)が策定され、2002年(平成14年)7月12日には「使用済自動車の再資源化等に関する法律」が公布された。また、建築物についても「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法、2000年(平成12年)5月公布)が制定された。
  4. リサイクルは万能か
    大量生産してもそれに応じてリサイクルを進めれば問題はないのだろうか。
    大量に生産されれば、リサイクルのプロセスに乗らず、不法投棄などによってごみとして自然環境の中に放置されたままになってしまうものも必然的に多くなる。これらのごみが自然環境や生態系に影響を与えるということはないのだろうか。
    また、例えばペットボトルの生産には石油等の天然資源が使われるほか、リサイクルの過程でもその回収運搬のためにはさらにガソリンや自動車の消費が必要となり、サーマル・ケミカルリサイクルのプロセスでは地球温暖化の元凶である二酸化炭素の発生は避けられない。回収を行う地方自治体の財政的負担、引いては納税者である私たち市民の負担も相当なものだ。
    大量生産・大量リサイクルという形で、いくらリサイクルを進めても、結局、便利さを追求するために資源を浪費し環境への負荷を大きくしていることにならないだろうか。
    私たちがこのような問題意識をもつのは、そもそも容器包装リサイクル法の成立した背景にはごみの減量化の要請があり、その背景には大量のごみ排出による環境汚染の防止、環境保全という市民の要求があったことを忘れてはならないと考えるからである。
    そうだとすれば、私たちはこの原点に返って大量リサイクルの現状が環境保全という要請に合致しているかどうかを検証する必要があるのではないだろうか。
  5. ごみ問題への取り組みを
    私たちは、以下において、このような視点から容器包装リサイクル法の成り立ちとその実施状況、その問題点を検討しようと考えた。あるべきリサイクル、ごみ問題の解決の方向を探るため、リサイクルを巡る市民の動きや外国の法制度まで視野に入れて検討してみた。
    さらに、根本的なシステムの変更はすぐにできないにしても、現行法制度を基本的な前提として、さらに改善点はあるのではないか。この点については、法を施行する行政側だけでなく、法施行に関係する市民側の問題点も含めて、よりよい法の運用を探ることは有意義であると考え検討を加えた。
    パネルディスカッションを通じて、参加者の皆さんとともに問題意識を共有し、市民の皆さんとともにごみ問題への取り組みを深めていきたいと考えている。
  6. 第2 容器包装リサイクル法下の現状と問題点

    1. 1 はじめに
      前述のとおり、現行の容器包装リサイクル法は、ごみの減量の重要な手段として、容器包装物を資源ごみとして再商品化利用するため、市民・市町村・生産者(容器包装物を製造する事業者や容器包装物を利用して中身を販売する事業者など)に、各々の役割と義務を担わせている。即ち、まず、市民は、容器包装物の分別義務を課されている。そして、市町村は、市民によって分別された容器包装物を、市町村の費用負担によって、再商品化適合物として再商品化事業者に受け渡す義務を負担している。他方で、生産者は、あらかじめ日本容器包装リサイクル協会を通じて再商品化義務量に応じた負担金を再商品化事業者に支払うことで、自社の再商品化義務を果たしている。
      さて、容器包装リサイクル法が施行されてから、5年以上が経過した。この時点において、容器包装リサイクル法の運用状況はどうであろうか。容器包装物の分別・収集制度はうまく機能しているのであろうか。また、分別収集された容器包装物は、有効に再商品化されているのであろうか。そして更に、法の最終目的であるごみ(一般廃棄物)の減量化は、進んでいるのであろうか。本章においては、以上のことを、自治体・環境省・財団法人日本容器包装リサイクル協会・再商品化事業者等に対する調査を踏まえて、以下のとおり、検証したい。
    2. 分別・収集
      (1) 分別収集の実態
      ア 市町村の分別実施状況
      容器包装リサイクル法に基づく市町村の分別収集対象品目は、平成9年4月からガラス製容器(無色・茶色・その他の色の分別)とペットボトルの2品目であったが、3年が経過した平成12年4月からは紙製容器包装とプラスチック製容器包装の2品目が新たに対象品目として加えられた。
      ⅰ)全国の動向
      容器包装リサイクル法に対応した各市町村の分別実施状況を見ると、平成9年4月から対象となったペットボトルについては、3,246市町村(平成14年3月末現在で東京23区を含む)のうち、平成9年度においては631市町村だったのが、平成13年度には2,617市町村になっており、20%実施から80%実施に伸びている。同様に、平成9年4月から対象となったガラス製容器は、平成13年度において約2,700市町村と、80%実施を超えている。然し、平成12年4月から対象となった紙製容器包装については平成13年度において404市町村であり、いまだ12%実施にすぎない。また、プラスチック製容器包装についても平成13年度において1,121市町村であり、35%実施にとどまっている。紙製容器包装・プラスチック製容器包装については、実施状況が全国的に見て著しく低いというのが現状である(資料1、環境省「容器包装リサイクル法に基づく分別収集・再商品化の実績」)。

      ⅱ)奈良県下の動向
      奈良県下においても、奈良市・橿原市等において、プラスチック製容器包装につき実施しているが、紙製容器包装については実施していない。また、大和郡山市・大和高田市・生駒市等においては、プラスチック製容器包装についても実施されていない。奈良県下のアンケート調査によれば、実施できない理由として、経費が嵩むことやストックヤードが確保できないことなどが挙げられている(資料2、奈良弁護士会「奈良県下アンケート調査結果」)。

      イ 市民の分別協力の実態
      ⅰ)回収率
      平成9年度から平成13年度にかけて、分別実施市町村が、20%から80%に伸びたペットボトルについて、回収率=分別収集量/生産量の調査があるが、その回収率は、平成9年が9.8%であるのに対し、平成13年には40.1%に上昇している(資料3、環境省「ペットボトルの生産量と分別収集量の推移・ペットボトルの廃棄量の推移」)。たしかに、法の浸透・自治体実施増加とともに、市民の分別意識・協力も上昇していると言える。しかし、後述のように、ペットボトル生産量増加の下での回収率40%は、まだまだ不十分である。また、ペットボトルでまだ40%であるから、プラスチック等の回収率の低さは推して知るべしである。 
      また、奈良県下の自治体アンケート調査では、市民間の意識に大きな幅がある、独居マンション等の分別排出状況の悪さに苦慮しているとの声があった(前掲資料2)。

      ⅱ)洗浄等
      ところで、市民は、分別排出において、洗浄やキャップの分離など再商品化適合物としての排出を求められているが、後に述べる日本容器包装リサイクル協会は各自治体から持ち込まれる資源ごみの再生適合状況について、A・B・C・Dのランク(ペットボトルは、A・B・D)を付け、インターネットで公開している。それによれば、平成13年度ペットボトルについて近畿圏において大阪市・京都市・大津市等大都市で軒並みDランクの低評価である。いまだ、再商品化適合物としての分別収集が不十分であると言わざるを得ない(資料4、日本容器包装リサイクル協会「平成13年度ペットボトル調査結果一覧表」)。
      因みに奈良県下の市町村については、奈良市・橿原市・大和高田市・大和郡山市等、概ねAランクであり、(収集後の市町村の選別努力もあろうが)分別排出に当たっての洗浄等の奈良県民の協力は一定レベルには到達しているのであろう。

      (2) 分別収集実態の問題点
      以上の分別収集実態をふまえた問題点は、次のとおりである。
      ア 市民の分別ストレス
      たしかに、回収率の不十分さや再商品化適合物としての排出の不十分さが指摘された。しかし、そもそも、分別収集は、市民に、かなりの負担を強いている(分別ストレス)。分別の素材区別については、平成13年4月からやっと生産者の「識別表示」が法律で義務付けられた。しかし、まだ全商品に徹底していない。また、大半の容器がまだ分別に配慮して作られていないとの指摘も多い。そのような中で、回収率の不十分さや再商品化適合物としての排出の不十分さを、市民モラルにだけ、帰責することはできないであろう。

      イ 市町村の財政負担
      ⅰ)名古屋市の実態
      現行法制度の下では、収集運搬が市町村の義務となっており、市町村の財政負担はきわめて大きい。法施行後、資源ごみ回収によって、市町村がいかに財政負担を強いられているかについては、名古屋市が公開している。それによると、平成10年の予算は、一般ごみ収集処分が258億円、資源ごみが19億円で、総額277億円であったのに対して、平成13年の予算は、一般ごみ219億円、資源ごみ90億円で、総額309億円で、32億円も市予算が増大している。この原因は、主に、収集車両の増加(528台から571台へ)や収集人員の増加(1044人から1070人へ)にある(以上、資料5、名古屋市「平成13年7月名古屋ごみレポート」からの抜粋)。名古屋市は、資源ごみ回収にかなり成果をあげている自治体であるが、資源化に熱心な市町村ほど財政負担が重くなる、ひいては、資源化に熱心な市民ほど多く税金を払わされているという構図になり、きわめて不公平な構図である。

      ⅱ)奈良県下自治体の実態
      奈良市においても、平成13年の一般ごみ収集運搬処理経費のトン当たり原価と再生資源化部門(資源ごみの分別収集・再生委託)のトン当り原価を比較すると、前者が42,785円であるのに対して、後者は、99,144円となっている(資料6、奈良市「部門別処理経費及びトン当たりの原価」)。今後奈良市と奈良市民が現行法制度の下で資源化をどんどん進めていけば奈良市財政を次第に圧迫することが目に見えている。
      また、奈良県下自治体のアンケート調査においては、有効回答24自治体のうち、21自治体が、人件費・設備費等の財政負担が増した旨を回答している。また、前述のとおり、プラスチック製容器の分別収集をストックヤードの確保ができないから見合わせているというような回答にも、自治体財政の負担増は、表れている(前掲資料2)。
      即ち、現行法は、市町村の多大な経済的負担を前提としており、国からのかけ声に市町村が今後ついていけるかはなはだ疑問であるし、理念的にも公平かという疑念が強いのである。

      ウ 事業系一般廃棄物
      現行分別収集実態の問題点としては、法定された分別収集義務が、家庭系一般廃棄物に限られ、事業系一般廃棄物が外されていることも挙げられる。前述の回収率の低さの一つの原因にもなっているのではないか。
      例えば、奈良市において、一般廃棄物の50%が事業系だという。奈良市がごみ資源化拡大の問題意識から、事業系も資源化の射程に取り込もうとすれば、運搬収集のみならず後述の再商品化費用まで丸抱えせざるを得ない(事業系については生産者に再商品化費用負担義務がない)。しかし、50%の事業系が放置されるとすれば、現行法の本来の目的は達成できないというジレンマが生じるであろう。

      エ 対象品目
      また、他の問題点としては、現行分別収集は、容器包装の枠組みにあるので、弁当パック・紙コップ・ラップ等の商品そのものは分別収集の対象にならない、クリーニング袋などサービス業等の容器包装は対象外などとなっている。このことは、同じ素材なのに再商品化ルートに乗る乗らないの差があり、市民感覚に合わず現場混乱するし、また、極めて合理性がない。プラスチックリサイクル等の素材別リサイクルに改善すべしとの声も大きいゆえんである。

    3. 引取・再生
      (1) 引取・再生の実態
      ア 再商品化事業者の引取
      市町村は、収集した資源ごみを再商品化事業者に引き渡して再商品化事業者によりリサイクルがなされている。そして、市町村は独自ルートで再商品化事業者を選択することが可能だが、指定法人である日本容器包装リサイクル協会を通じて再商品化事業者に引き渡すルートが最も多い。ここで、容器包装リサイクル協会は、市町村から再商品化引取依頼のある資源ごみを入札(低値落札)によって、再商品化事業者に引き渡す。法施行直後、再商品化事業者の市場が育成されておらずペットボトルの引き取り拒否で山積みにされたということもあったが、現在では、入札がなかったり、引き取りが拒否されたりということはないようである。因みに、現在のペットボトルの受け入れは、ペットボトル再商品化市場の処理能力の50%で、まだまだ受け入れ可能という。
      ただし、市町村の排出する資源ごみについて、市町村ごとに再商品化適合性のA・B・C・D(A・B・D)ランクが付けられていることを前述したが、今後、再商品化市場の需給バランスによっては、将来的にDランクの資源ごみの引き取り拒否が発生することはありうるであろう。

      イ 再商品化事業者によるリサイクル
      ⅰ)リサイクル形態の動向
      さて、再商品化事業者に引き取られた資源ごみは、どのようにリサイクルされているか。昨今、ペットボトルからペットボトルを再商品化する技術開発の動向もある。しかし、現時点では、かなりの資源ごみが、マテリアルリサイクル(廃棄物を再生加工して、物として再生利用すること)でなく、サーマルリサイクル(廃棄物を焼却してその熱エネルギーを発電や熱源に利用すること)・ケミカルリサイクル(高炉原料・化学原料・燃料等に変えること)の形でリサイクルされている。特に、プラスチック製品においては、マテリアルリサイクルは平成13年度において7.9%に過ぎず、後はケミカルリサイクルである。また、紙製容器包装については、平成13年度において全国で製紙原料に使用されるマテリアルリサイクルが73.6%であり、サーマルリサイクル(紙製だけに認められている)の割合は、20.7%になっている。(以上、資料7、日本容器包装リサイクル協会「再商品化されたものの利用状況」)。

      ⅱ)奈良市の資源ごみの再商品化現状
      ここで、奈良市の再商品化現状を見ると、ペットボトルは、平成14年度は全て大阪の根来産業株式会社に引き取られている。同社においては、引取量の80%を再資源化しており、うち95%をカーペットとして再生している。これは、マテリアルリサイクルである。
      また、プラスチック製品は、そのうち、数トンの白色トレイだけが、大阪の有限会社徳山商事に引き取られ、インゴットというブロックにした後、国内で建築資材にリサイクルされたり海外でカセットテープ等にリサイクルされたりしている。その他のプラスチック製品は全て(5982トン)日本鋼管株式会社が引き取り、高炉還元剤として、福山製鉄所の溶鉱炉で使用されている。(以上、資料8、奈良市「再生資源引き渡し先、数量、負担金」、資料9、根来産業「インフォメーション」抜粋、資料10、徳山商事「廃棄物処理のご提案」抜粋、資料11、日本鋼管「使用済みプラスチック高炉原料化システム」抜粋)即ち、奈良市において、プラスチック製品はほぼ100%ケミカルリサイクルの形態がとられているということである。

      ⅲ)再商品化費用の負担
      ところで、現行法は、再商品化費用は生産者が負担する仕組みになっている。具体的には、業種区分や素材に応じて算定係数が定められ市町村から提出される排出見込量及び関係者協議で決められる委託単価を各乗じて算出されている。生産者の再商品化委託費用総額は、各市町村の資源ごみ回収の進行に合わせて、平成9年度に14億1600万円であったのが、平成11年度には50億9100万円にまで上昇している。
      しかし、ここで、現行法は、生産者のうち、小規模事業者等には費用負担義務の免除をしている。そこで、委託費用の一部を市町村が肩代わりせざるを得ない仕組みになっている。その負担割合は、素材毎に毎年変わり、負担幅は概ね1%~15%になっている。

      (2) 引取・再商品化の問題点
      以上の引取・再商品化の現状をふまえた問題点は、以下のとおりである。
      ア リサイクル形態
      引取・再生の問題点としては、プラスチック製品等において、ケミカルリサイクルの率が高く、紙製品においてサーマルリサイクルも一定の割合を占めていることの問題点が指摘されている。ケミカルリサイクルやサーマルリサイクルは、市町村と市民に分別収集の大きな負担を課しながら、焼却の経路を辿るのであり、一般ごみによる焼却と環境負荷等においてどれほど異なるのかの疑問が払拭し得ないとの見解がある。この点、ドイツでは、マテリアルリサイクル優先の方針が打ち出されており、循環経済廃棄物法(1996年施行)で、熱利用にかなり厳しい技術的条件(焼却発生熱量が11,000キロジュール/㎏以上、熱効率75%以上)が付けられ、事実上、サーマルリサイクルがほとんどできないようになっているという(熊本一規著「ごみ行政はどこが間違っているのか?」合同出版)。

      イ 市町村の再商品化費用一部負担
      次に、再商品化費用負担については、現行法が、小規模事業者等を再商品化費用負担者から除外しているため、市町村が再商品化費用の一部を肩代わりさせられており、市町村が、前述の収集運搬費用に加えて、財政負担を強いられていることになる。そして、市町村が、資源化に協力すればするほど、その自治体及び市民の負担が大きくなるという図式の不公平さがここにも存する。

      ウ フリーライダー
      他方で、生産者のうち、法が費用負担を課している特定事業者の申告は、自主申告に任されているため、かなりの数のフリーライダー(ただ乗り)が存するということである。日本容器包装リサイクル協会は全国の商工会で案内書を配ったり、相互牽制の趣旨で契約事業者名をインターネットで公表したりしているが、国レベルでの氏名公表等の厳しい指導にまで至っていないようである。

      エ リサイクル効果の説明
      そして、引取・再商品化についての問題としては、国や地方自治体が、市民に対して、どのようなルートでどのようなリサイクルがなされ、それが、環境負荷等でいかなる効果があるのか、必ずしも十分な説明がなされていないのが現状だと思われる。市民は分別だけせよでは、十分なインセンテイブが働かない。また、市民・自治体に多大な負担をかける、資源ごみの分別収集が、どのような効果をもたらしているのか、十分な検証がなされるべきであり、国はその説明責任を果たす必要があると思われる。

    4. 減量化
      (1) ごみ排出量の経年推移の実態
      ア 法施行による一般ごみから資源ごみへのシフト
      前述のとおり、容器包装リサイクル法の最終目的は、ごみ(一般廃棄物)の減量化にある。容器包装リサイクル法は、とりわけ、容器包装物が、家庭から排出されるごみの容積比で60%、重量比で25%を占めるものであるが故、容器包装物の減量によってごみの大幅な減量を図ろうとしたのである。
      そして、たしかに、容器包装リサイクル法施行後、前述の分別収集により、家庭系廃棄物は、一般ごみと資源ごみに分別収集され、資源ごみは、単純な焼却でなく、資源化のルートに乗ることになった。従って、一般ごみから資源ごみへのシフトをごみの減量化の指標とすれば、ごみの減量化は進んでいることとなる。前述のとおり、ペットボトルを例とすれば、分別収集量/生産量は、平成9年の9.8%から平成13年の40.1%まで上昇している。

      イ ごみ搬入量総量
      しかし、一般ごみと資源ごみを加えたごみ総量はどうであろうか。各自治体のごみ搬入量総量(一般ごみ+資源ごみ)の推移を見てみる。
      奈良市のごみ総搬入量は、平成9、10年と平成11年の間に、減量の効果が見られるが、平成11年以降は、横ばい状態で、決して減少傾向と評価できない(資料12 奈良市「ごみ・資源搬入量経年」)。また、生駒市・橿原市・大和高田市・大和郡山市においては、平成9年前後で、およそ有意な減量の効果は見られない(資料2)。また、家庭ごみ有料化施策によりごみ減量効果をあげてきたと言われる滋賀県守山市においても、資源ごみを加えたごみ総搬入量は、近年資源物の増大とともに増大しており、それは世帯増加率を超えている(資料13、守山市「廃棄物処理の年度別推移」)。もっとも、この点、名古屋市が、平成10年から平成12年にかけて、ごみ搬入量を漸減させ、一般ごみにおいては23%、資源ごみを加えても8%減としているのは、特筆できる(資料14、名古屋市「名古屋ごみレポート」抜粋)。

      ウ 生産量の増大
      次に、容器包装物の生産量自体はどうであろうか?
      ペットボトルの生産量を見てみると、平成9年が219,000トンであったのに対して、平成13年には、403,000トンに急増している(前掲資料3)。
      従って、前述のとおり、ペットボトルの回収率が、9.8%から40%に増大しても、総量として、資源ごみとして収集されていないペットボトルの量は増大している。即ち、平成9年は、219,000トン×90.2%=19,753,800トンであるのに対し、平成13年は、403,000×60%=241,800,000トンである。また、ペットボトルは、ワンウェイビンであるから、生産量の急増は、そのまま、ペットボトルに関する、ごみ総量(一般ごみ+資源ごみ)の急増にスライドされることになる。
      また、容器包装物全体の生産量の経年推移を見た場合、平成9年の法施行を挟んで、平成8年から平成12年までの間に、平成8年には、生産総量1884.3万トンであったのが、平成10年に1839.3万トンに落ちたものの、平成12年には1876.9万トンに増大している(資料15、環境省「容器包装の生産量及び消費量の原単位一覧表」)。

      (2) ごみ排出量の経年推移の問題点
      以上のごみ排出量の経年推移の実態をふまえて、その問題点は次のとおりである。
      ア ごみ搬入総量の意味
      基本的に、別の項で述べるように、リサイクルの増大が資源枯渇や環境負荷に与える問題性を考えたとき、一般ごみから資源ごみにシフト(回収率増大)すればよしとすることはできない。従って、各自治体の資源ごみを含めたごみ搬入総量の増減が評価対象とされるべきである。
      そこで、各自治体の資源ごみを含めたごみ搬入総量を見た場合、前述のとおり、法施行前後で、十分な効果が表れているとは言い難い。
      その中で、たしかに、名古屋市は、ごみ搬入総量を着実に漸減させている希有な例として紹介されている。しかし、その背景として、名古屋市は、藤前干潟埋め立てによる一般廃棄物最終処分場建設計画の断念により、現存する最終処分場が2年で満杯になるという危機感があった。そして、名古屋市は、平成11年2月に「ごみ非常事態宣言」(ごみ減量を求める市民への緊急の訴え)を打ち出し、以降、市・市民が協働してごみ減量に向けての努力を続けているのである(資料16、名古屋市「ごみ非常事態宣言」、資料17、名古屋市「ごみ非常事態宣言2周年にあたって」、資料18、名古屋市「エコライフメッセージ」)。
      即ち、法施行の一般的効果だけで、ごみ搬入総量を減らすことができるとは言えないのである。

      イ 生産量増大の意味
      次に、前述のとおり、平成9年の法施行前後で、容器包装物の生産量総量は減少していない。このことは、とどのつまり、資源ごみを含めたごみ総量を増大させる結果を導く。たしかに、生産者は、容器の厚さを薄くしたり素材変更したりの企業努力をしているようであるが、容器包装の全体量の減少への成果はない。即ち、法施行は、容器包装物の数量を減らそうとする生産者のインセンティブ(動機付け)になっていないということである。

      ウ ペットボトル急増の意味
      また、容器包装物のうち、ペットボトル生産量の急増については、ビン・缶からのシフトがあり、その原因は、中味飲料の消費者嗜好の変化に起因し、やむないこととの見方もある。しかし、現状に置いて、ペットボトルがワンウェイ容器の典型であり、ペットボトル生産量の増大は、リターナブル容器駆逐の象徴であって、リサイクルよりリターナブル・リユースを重視すべきであるとする立場から、望ましくない現象であることは間違いない。
      以上のとおり、平成9年の法施行は、分別収集の広がり、充実にもかかわらず、いまだ、ごみ減量の効果としては、十分に機能していないと言わざるを得ないのである。

    5. まとめ
      容器包装リサイクル法下における、分別収集・引取再生・ごみ減量化の実態の問題点は、以上のとおりであり、まとめて整理すると次のとおりである。
      (1)分別収集協力自治体は紙製・プラスチック製等をはじめとしてまだまだ少ない。
      (2)分別収集に関する市民の協力もまだ不十分である。
      (3)商品がまだ分別しにくく市民の分別ストレスになっている。
      (4)分別収集に関する市町村(ひいては市民)の経済的負担が大であり、且つ、資源化を進めればそれだけ負担も大となり、公平性を欠く。
      (5)事業系ごみが分別収集の法規制から外れており法の効果が半減し且つ不公平である。
      (6)分別収集は容器包装に限定され、素材リサイクルになっていないため、分別収集現場に混乱が生じ、再商品化の効率性にも疑問が生じる。
      (7)再商品化に関してはマテリアルリサイクルがまだ少なく、ケミカルリサイクルやサーマルリサイクルでは環境負荷軽減等の効果に疑問である。
      (8)再商品化費用に関しても一部、市町村(市民)が負担しており、その経済的負担は見逃しえず、且つ不公平を導く。
      (9)特定事業者のフリーライダーが多く存しており不公平である。
      (10)引取・再商品化経路、効果につき、市民に対して国・自治体による十分な説明責任が果たされていない。
      (11)ごみ減量化効果については、法施行後に容器包装物の生産量は減っておらず、また、自治体への資源ごみを含めたごみ搬入量も減っていない。
      (12)ワンウェイビンの象徴であるペットボトルの生産量は法施行後急増している。

      ところで、以上の現状の問題点は、分類すれば、法制度自体から発生している問題点と、法制度が機能していないことによる問題点が存すると言える。例えば、資源化に熱心な市町村・市民ほど、収集運搬費用及び一部の再商品化費用も含めて、費用負担を多く強いられているという不公平があることや、事業系ごみが枠外に放置されているという不公平は、法制度上から発生している問題点である。これに対して、まだまだ、プラスチック等の分別収集義務を果たせない市町村の多いことや市民の分別協力も十分でない点、或いは、特定事業者のフリーライダー化、マテリアルリサイクルの不十分さ等は、予定した法制度が機能していない問題点である。
      しかし、後者の、予定した法制度が機能しない原因も、もともと法制度の立場の矛盾が原因になっているのではなかろうか。即ち、市町村や市民の分別収集に関する協力が不十分なのは、そもそも市町村や市民の負担が大きすぎたり不公平さが目に見えているからである。また、フリーライダーの出現も、そもそも、法制度の生産者に対する責任の取らせ方が基本的理念として甘いからである。
      従って、法制度が機能していない問題点も、根っこには、現行法制度の問題点が潜んでいると考えるべきではないか。
      そして、現行容器包装リサイクル法が本来めざすべきごみ減量については、容器包装物総生産量が減っていないことやワンウェイビンの象徴であるペットボトルの生産量が急増していることから、とても効果が期待できると言えない。
      環境省は、現行容器包装リサイクル法の問題点を指摘するには、制度施行状況が安定期に入っていないので早計だとの考えも持っているようである。しかし、以上の現状評価を前提とすれば、現行法制下の再資源化推進に根本的な問題があると考えてもいいのではないか。現行法制度自体の不公平や現行法制度が機能していない実態やゴミ減量効果に対する疑問は、そもそも、現行法制度が、リデュース・リユース・リターナブルよりリサイクルを推進していること、及び、責任主体を生産者とする拡大生産者責任の理念を十分に採用していないことに根本原因があるのではないか。
      そこで、われわれは、本章の現状評価を踏まえて、以下で、まず、そもそも、「再資源化=リサイクル」は万能であるのかについて考えてみたい。そして次に、本来のごみ減量化に向けてのあるべき法制度や、自治体の取り組み、あるいは市民の取り組みについて考えていきたい。

      【参考文献】
      高寄昇三著 「ごみ減量再資源化政策」(ぎょうせい)
      熊本一規著 「ごみ行政はどこが間違っているのか?」(合同出版)

    第3 リサイクルに問題はないのか

    1. はじめに
      現行容器包装リサイクル法の問題点を検討してきたが、仮にこれらの現行法上の問題点がクリアされたとして、「リサイクル」そのものに問題はないのか。特に、前述のとおり、ケミカルリサイクルやサーマルリサイクルが問題視されることは多いが、それではマテリアルリサイクルには問題はないのか。
      容器包装リサイクル法は、第1条において、その目的を「一般廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り」と規定している。果たして、この目的に照らして見たとき、リサイクルは本当に資源の有効な利用に資するものであるのか、環境に与える負荷は全体としてどうなのか、リサイクルを施策として強力に進めていくことで良いかの、リサイクル自体に伴う問題はないのか。これが本章で検討すべき点である。
      この点に関しては、名古屋大学工学部の武田邦彦教授の著書がきわめて重要な指摘を含んでいると考えるので、以下にその内容を紹介する。
    2. リサイクル幻想
      武田教授は、その著書「リサイクル幻想」(文春新書)等において、今のリサイクルの矛盾を列挙し、「リサイクル」が目的化しているかのような現状のもとで安易に「リサイクル」を進めることが、全体的に見れば資源の節約や環境保全に結びつかないことを痛烈に指摘されている。
      (1) リサイクル市場・経済性の破綻
      一般に、使用された材料は必ず劣化し、材料としての品質低下は不可避である。そうだとすると、リサイクルによっても、ある材料を同一用途の材料として使用することはできず、いわば「より下位の用途」に再使用するしかない(これをカスケード・リサイクルという)。例えば、テレビ等のキャビネットに使用されていた材料をリサイクルして、公園のベンチに再利用するなどというのがその典型例である。
      しかし、同一用途への再利用ができず、下位の用途へのリサイクルがより一層進められた場合に、大量のリサイクル材料を利用するだけの「下位の用途」が存在するのか。いわば大量のリサイクルによって公園にベンチがあふれるような状態にならないか、逆に言えばそのようなリサイクルは経済的にも成り立たないのではないかというのが第1の問題である(リサイクルの需給矛盾)。

      (2) リサイクルの危険(有害物質の混入)
      第2に問題となるのは、リサイクル材料の中に有害物質が混入され、これが除去されないまま再利用される危険性である。例えば、ブラウン管や電子機器部品などもともと材料中に有害物質が含まれている工業製品が多数存する。これをガラスや銅などとして再利用する際に鉛やヒ素などが除去されないまま材料として使用されることもありうる。リサイクルが行われない非循環型社会では、有害物質は廃棄物処分場に廃棄された。廃棄物処分場からの有害物質の漏洩が問題となるのはその故である。リサイクルにより工業製品をそのまま廃棄せず別の用途に再利用するとなれば、有害物質は生活圏に戻ることになるのであって、その利用用途によっては人体に対する有害物質の影響を無視することはできない。環境ホルモン等の問題をも考慮すればなおさらである。
      現在のリサイクルは、いわば「浄化系が欠けたリサイクル」でありそれ自体が問題であるが、有害物質を除去する浄化系を確保しようとすれば、後述する資源エネルギーのさらなる投下が避けられない。

      (3) リサイクルによる資源の浪費
      例えばペットボトルをリサイクルするためには全国的に拡散したペットボトルを回収し分別する作業が必要となる。その中で多くの人の手やエネルギーを使用する。回収するためのトラック・タイヤ・運転手・燃料、リサイクル工場でも施設・電気・水道・暖房・動力・作業員など。これらを総合的に考えた場合に、ペットボトルをリサイクルしたことにより、ペットボトルが廃棄物とならなくなったとしても、限りある資源やエネルギーを有効利用したと言えるのか。
      武田教授によれば、日本における物質の流れを見ると、資源が20.5億トン、このうち工業原料として11.5億トンが利用され、工業製品となる物質量が5.4億トン、これが使用され廃棄される量が2.2億トンで、このうち1.3億トンが回収され再資源化に回されているとのことである(現状における再生資源量は2.2億トンであり、再生資源の利用はわずかに総資源の10分の1に過ぎない)。今後、「循環型社会」により回収率が向上すると回収量は2.4億トンぐらいにはなりうるが、そのためには回収・分別のための資源、再資源化のための資源を投入する必要があり、この資源は7億トンにも及ぶ。従って再資源化のために、その約3倍の資源を投下しなければならない計算となる。
      なぜリサイクルのために3倍もの資源を使用しなければならないのか。武田教授によると、それは、薄く拡散された状況にある「資源」を、資源の状態にするために大量の資源エネルギーを要することにある。材料工学の考え方に基づくものであり、いわば「薄いものは資源ではない」、「資源の状態にあるものが資源」なのである。そして前述のとおり、リサイクル材料に混入した有害物質を除去するためには、より多くの資源エネルギーの投下を要する。
      さらに、現状のリサイクルでは、例えば紙のリサイクルなど、森林のように太陽エネルギーによって日々新たに生産される資源(これを「月給型資源」という)のリサイクルのために、化石燃料、地下資源など新たに生産されず限りのある資源(これを「遺産型資源」という)を使用することが行われているが、これはまさに持続性のある資源を繰り返し使うために、持続性のない資源を消費しているものであり、資源の浪費にほかならない。

      (4) リサイクルによる環境への負荷
      リサイクルに約3倍もの資源エネルギー投下を要するとすれば、それに伴って環境への負荷を増大させることは当然である。例えば、ペットボトルを石油から製造する場合と、リサイクルしてペットボトルを製造した場合を対比すると、武田教授の試算によれば、リサイクルする方が3倍以上の石油を要し、その過程で出される廃棄物の量も大幅に上回るとされている。
      リサイクルは環境にやさしいと言われるが、総合的に考えれば、その具体的な説得力ある根拠は示されておらず、むしろ市町村など廃棄物の発生場所に近いところで焼却する方が環境への負荷は小さい。そうだとすれば、安直に「リサイクル」を進めることは将来に禍根を残すことになる。

    3. リサイクルをどう考えるべきか
      武田教授は、以上を前提にリサイクルは有害であり、物は設計寿命まで大切に使い切ることの重要性を指摘した上で、その後はすべてを焼却し、焼却灰を資源の「人工鉱山」として将来の資源枯渇に備えて蓄積すべきと結論される。
      リサイクルを全否定することにまでは躊躇を感じるが、物事を部分的に、或いは単方向で見るのではなく、多方向から大きな視野で見るべきと言う点では非常に示唆に富む指摘である。少なくとも「大量生産・大量消費・大量リサイクル」という方向に未来がないことは明らかであり、現状においてもリサイクルがごみの発生抑制に必ずしも結びつかず、廃棄物から資源ごみへの付け替えがなされているのに過ぎないことに照らしても、「リサイクル」を手放しに進めることはできない。特に、「リサイクル」が環境にやさしいものであると安易に考え、リサイクルすることが目的であるかのような施策がなされるとすれば、その再検討が必要不可欠である。
      むしろ、次の点を改めて考え、あるべきリサイクルの姿と、より総合的なごみの発生抑制、資源の有効活用を検討すべきである。

      (1)「リサイクル」自体を目的化するのではなく、環境への負荷、資源の有効利用を本当に考慮した環境によいリユースやリサイクルを模索すること。
      (2)そのためには、国或いは民間調査機関において、リサイクルを行うことがどの程度の環境負荷を与えるのか、その過程でどの程度の資源を要するのか、バージン資源からの製造過程と対比して、具体的かつ数値的な科学的評価を行い、これを明らかにすること。
      (3)このような科学的評価や検討を基礎として、消費者、事業者、国や地方自治体らがあるべき方向性を論議すべきこと。とりわけ国や地方自治体は、より総合的なごみの発生抑制のためそれぞれの立場で行うべき施策を共に検討し、事業者団体への説得など積極的対応をとるべきこと。併せて、国や地方自治体は、議論をリードすべき環境保護団体などNPOの活動を積極的に支える制度面、運用面における措置を行うこと。
      (4)リサイクルの各年度毎の実績等についても、国は、単純な製品の再利用比率を示すリサイクル率の公表ではなく、そのリサイクルでどの程度資源を節約でき廃棄物を減らすことができたかという「総合リサイクル率」を算定し公表すべきこと。
      【参考文献】
      武田邦彦著 「リサイクル幻想」(文春新書)
      「『リサイクル』汚染列島」(青春出版社)
      「『リサイクル』してはいけない」(青春出版社)

      第4 あるべき法制度

      1. はじめに
        既に見たように、わが国の容器包装リサイクル法にはさまざまな問題点が含まれている。そこで、大量生産、大量消費、大量廃棄という悪循環を絶つことができるような法制度の具備が必要と考えられる。
        そこで、その手がかりとして各国の法制度を概観した後で、あるべき法制度について考えてみることとする。
      2. 各国の法制度
        (1) アメリカ
        ア Pay-As-You-Throwプログラム
        排出者である一般市民が排出するごみの量に応じて、収集・処理の費用を支払うシステム。一般的には、ごみ収集袋や収集箱1点あたりの単価が定められており、これに基づき費用が収集されている。

        イ デポジット制度(ニューヨーク州の例)
        対象となるのは、炭酸飲料、ビール、ミネラルウォーター、ワインで1ガロン(3.8㍑)以下のものに限る。牛乳や果汁の容器は対象外とされている。
        消費者が取次店に持ち込むと5¢(約6円)が支払われ、取次店が販売者に持ち込むと手数料2¢(約2.4円)を含めた7¢(約8.4円)が取次店に支払われる。なお、消費者の取次店への持ち込みは、1日1回当たり240本の上限がある。

        1999年(平成11年)のデータによると、全体の回収率は約72%(ビールビン79%、ソーダ炭酸飲料ビン65%、ワインのビン38%)である。

        (2) イギリス
        イギリスでは、家庭廃棄物については市・区・州が、産業廃棄物については排出事業者が、それぞれ処理責任を有している。

        ア 埋立税(Landfill Tax)
        1996年(平成6年)から導入された制度で、1996年(平成6年)10月1日以降に埋立処分場の許可を受けたものは、受け入れた廃棄物量に応じて納税する。1996年(平成6年)当初、安定廃棄物は1トン当たり2ポンド(約382円)、他の廃棄物は1トン当たり7ポンド(約1,337円)の標準税率が課され、後者は1999年(平成11年)に10ポンド(約1,910円)に引き上げられ、その後2004年(平成16年)まで毎年1ポンド(約191円)ずつ引き上げられることになっている。

        この制度に対しては、不法投棄の増大につながるとの批判もある。

        (3) フランス
        フランスでは、家庭廃棄物については市町村が、産業廃棄物については排出事業者が、それぞれ処理責任を有している。
        ア 容器包装税(Packing Tax)
        1993年(平成5年)1月から導入された制度で、容器包装のリサイクル率を向上させることを目的としている。
        自ら容器包装の回収処分をしない容器包装利用メーカーには、容器包装リサイクルの認可団体への金銭的貢献が義務づけられている。具体的には、容器包装の重さによって異なるが、容器包装1個につき0.001~0.01フラン(0.019円~0.19円)の範囲で認可団体に容器包装税が納入される。

        この制度の導入により、家庭廃棄物は15%減量されたという。

        イ 家庭廃棄物貯蔵税(埋立税)
        1993年(平成5年)4月から導入された制度で、リサイクルや燃焼など埋立(貯蔵)以外の処分を推進させることを目的としている。家庭廃棄物の埋立処分場が受け入れる廃棄物の量に応じて、処分場の事業者に課せられる税である。

        ウ エコ・アンバラージュ社(Eco-Emballages S.A.)
        容器包装の生産者は、①デポジットシステムにより自ら容器包装を回収し、再資源化する、②国が規定したEE社に費用を払って回収、再資源化を委託する、いずれかを選択しなければならない。
        ②の方法を選択する場合、具体的には以下のとおりとなる。
        生産者は、包装廃棄物の回収・再生利用についてEE社と委託契約を締結する。
        EE社と委託契約を締結した生産者は、対象商品へロゴマーク(緑のマーク「le point vert」)を付けて販売し、EE社に委託料としてライセンス使用料を支払う。
        EE社は、市町村に包装廃棄物の回収作業を依頼し、経費の一部を負担(自治体が回収した素材ごとに重量に応じた資金援助)する。
        市町村は、回収した包装廃棄物をEE社から作業委託を受けて再生処理業者に引き渡す。
        再生処理業者は、再生処理を行い、再生された2次元料を需要産業(再生利用業者)に売却する。

        日本もフランスも、市町村が包装廃棄物の分別・収集を行ってる点で共通するが、その費用負担(援助)を市町村が負うのか(日本)、生産者が負うのか(フランス)という点で根本的な違いがある。

        後述するように、ドイツでは容器包装の収集はDSDが行い、それ以外の家庭ごみの収集は自治体が行うというように二重に行われているのに対し、フランスではごみの収集はすべて自治体が行っているという点に違いがある。

        (4) ドイツ
        ドイツでは、家庭廃棄物については市町村が、事業系廃棄物については、①処分される廃棄物は事業者の自家処分または原則市町村による処分、②リサイクルされる廃棄物については、排出事業者責任の下での民間事業者によるリサイクルという分担がなされている。

        ア デポジット制度
        容器包装令において、すべての飲料容器についてデポジットが課されている。ただし、全飲料容器の72%以上をリターナブル容器にする場合、全飲料容器に対するデポジット義務は免除されることとなっている。
        なお、使い捨て飲料容器に関しては、DSD社等による回収・リサイクル制度に参加し、DSD社等がリサイクル義務を達成することによりデポジット義務は免除される。

        イ リターナブル容器の利用
        ドイツでは、1967年(昭和42年)から、飲料業界が作ったドイチェ・ブルネンと呼ばれる業界団体が決定した統一規格のビンをほとんどの企業が使用していることから、生産者が再利用しやすいシステムとなっている。また、ペットボトルについても耐久性のある材質を使って、リユースしている。

        ウ デュアルシステム・ドイチュラント社(Duales System Deutschland社)
        容器包装の生産者が出資してデュアルシステム・ドイチュラント社を設立し、自社製品にグリュネ・プンクトマーク(GPマーク)を付けている。
        GPマークが付いている容器包装が廃棄物になったときには、DSD社から委託を受けた市町村がまたは民間業者が容器包装を回収、分別する。
        消費者は、GPマークが付いている容器包装を他の家庭ごみと分別して、DSD社指定の黄色いごみ箱や袋などに入れて排出しなければならない。
        排出されたGPマークの付いた容器包装は、DSD社が契約しているリサイクル業者に運ばれ、再生される。
        DSD社は生産者からGPマークの使用料を徴収し、市町村への委託料のほかリサイクル費用にも充てている(デュアルシステム)。

        DSDの効果として、①家庭、小企業が使用する容器包装材の80%以上を回収してリサイクルしていること、②DSDが徴収する料金が高いために、企業に対して容器包装材の使用を削減するという強いインセンティブとなっていること、③容器包装材以外の分野におけるリサイクルにおいて、DSDと同様の制度にならないように自主規制の途を選ばせていることがあげられている。

        (5) デンマーク
        デンマークでは、家庭廃棄物、産業廃棄物のいずれについても自治体が管理責任を負うとともに、リサイクルについては主に民間企業、焼却については主に自治体、自治体出資企業、埋立については公的機関がそれぞれ役割を分担するという仕組みになっている。
        ア 小売容器税
        小売容器の生産者に対して、その重量または容積と素材に応じて課税されるものである。
        この税の目的は、①再使用可能な容器の利用促進、②容器の重量に応じた課税をすることにより、生産者に容器製造に用いる資源の量(=廃棄物の発生量)を少なくしようとする動機を与えることにある。

        イ 使い捨て食器税
        使い捨て食器の卸売業社等に対して、卸値の3分の1に当たる額が課税されるもので、使い捨て食器の使用を抑制し、廃棄物の発生を抑えることを目的としている。

        廃棄物処理施設に対して課せられる税金であり、1998年(平成10年)現在で、①埋め立てされる廃棄物については375クローネ/㎏(約7,313円/kg)、②発電施設で焼却される廃棄物については280クローネ/㎏(約5,460円/kg)、③その他の施設で焼却される廃棄物については330クローネ/㎏(約6,435円/kg)、④リサイクルされる廃棄物については0クローネ/㎏(0円/kg)となっている。
        このように処理方法別に異なる税額を設定することで、より好ましい処理方法が選択されるように排出者である自治体や生産者を誘導することを目的としている。

        エ 廃棄物処理手数料の従量化
        行政による廃棄物処理費用は、それぞれの地方自治体の議会の判断により、処理手数料または税のいずれかにより賄われている。
        また、手数料によった場合、その額は自治体によって異なり、年間800クローネ(1万5,600円)から2,500クローネ(4万8,750円)の間であるが、従量制を採用しているのはそのうちの約10%にすぎないとされている。

        オ デポジット制度
        ⅰ)国内で販売されるビール及び炭酸飲料はリターナブル容器でのみ販売が許可されている。そして、そのような容器に対しては、①500㏄未満の容器に対しては1.25クローネ/本(約24円/本)、②500㏄以上の容器に対しては2.5~4クローネ/本(約49円~約78円/本)のデポジットがかけられている。

        ⅱ)また、飲料容器は新しく生産される段階で課税される(プロダクトチャージ=生産時課税)。リターナブル容器の場合には1度の課税ですむことから、企業がリターナブル容器を利用するインセンティブとなっている。

        ⅲ)さらに、飲料容器に関する規制によって、国内に流通する飲料容器の種類が限定されていることから、生産者が再利用しやすくなっている。

        ⅳ)以上の結果、これらの容器の回収率は99%にも達しており、ガラスビンの場合には平均で35~40回繰り返して利用されている。

        (6) 韓国
        ア 預置金制度
        容器包装、家電、タイヤ、乾電池、蛍光灯を対象として設けられている制度で、メーカーが出荷時に1個または1キログラムあたり定額のお金を政府の特別会計に納め、回収すれば個数または重量に応じて同額がメーカーに返還されるというもの。1992年(平成4年)から実施されている。

        イ 負担金制度
        有害性があるために、再利用不可能なものが対象となっており、10種類30品目が対象とされている。預置金制度とは異なり、負担金は返還されず、対象物を処理する政府や地方自治体の処理費用に充てられる。

        ウ ごみ袋従量制度
        1995年(平成7年)1月1日にすべての地方自治体で施行された制度であり、指定袋を消費者に購入させ(スーパーなどで購入することができる。)、その指定袋にごみを入れて出さなければ回収しないという方法で、ごみ処理費用を消費者に負担させようとする制度である。ごみを減らす努力をした人は、指定袋の購入量を減らすことができる(負担金を減らすことができる)ので、消費者に対するインセンティブとして働いている。

        エ 1回用品(使い捨て商品)規制
        1994年(平成6年)に施行された「資源の節約と再活用の促進に関する法律」に依拠する制度であり、すべての食堂を対象に割りばし、紙コップ等の無料配布を、10坪以上の売り場ではレジ袋等の無料配布を、宿泊業ではカミソリ、歯ブラシ、シャンプー等の無料配布を禁止するものである。例外として、食堂では90%以上回収・再活用すれば1回用品の使用が許されている。

      3. あるべき法制度
        (1) 問題の所在
        既に見たように、わが国の容器包装リサイクル法には、いくつかの問題点があり、その結果、果たして容器包装リサイクル法がごみの減量化につながっているのかという疑問がもたれている。
        そこで、既に指摘された容器包装リサイクル法の問題点のうち重要と思われるものをいかに是正すべきかという視点から、あるべき法制度につき検討していくこととする。

        (2) 容器包装リサイクル法の改正を
        ア まず、容器包装リサイクル法の分別収集の対象が容器包装に限定され、素材別にリサイクルするシステムとなっていないという問題点がある。
        容器包装廃棄物の廃棄物に占める割合が高いことから対象物を容器包装に限定したという経緯はあるものの、素材が同じであるにもかかわらず容器包装物とそれ以外のものとが別異に扱われていることについては市民感情に合致しないであろう。また、資源ごみの回収という視点からも、素材が同じであるにもかかわらず容器包装とそれ以外のものとを別異に扱うべきではない。
        以上よりすれば、容器包装リサイクル法を、素材別に分別収集を行うように法制度をあらためるべきである。なお、その場合、容器包装の生産者を特定事業者としている現行容器包装リサイクル法は、抜本的に改正される必要がある。

        イ 次に、容器包装リサイクル法においては、事業系の容器包装廃棄物が分別収集の対象とはなっていないという問題点もある。
        しかし、資源ごみの回収という視点からは、事業系の容器包装廃棄物と家庭系の容器包装廃物を別異に扱うべきではない。
        それ故、容器包装リサイクル法を改正することによって実現するか、または新たな法制度を創設することによって実現するかという問題はあるが、事業系容器包装廃棄物についても、分別収集を行うような法制度を具備すべきである。なお、その場合には、廃棄物処理法との関係も問題となると思われる。

        ウ ところで、容器包装リサイクル法の最大の問題点は、容器包装の回収という最も負担の重い部分を市町村が担わされており、生産者がその負担を負わなくてもいいというシステムになっている点にあると思われる。
        もちろん、生産者も、市町村が回収した容器包装の量が増えれば増えるほど指定法人に対して支払わなければならない委託料は増えるので、容器包装リサイクル法が生産者に対してもある程度のインセンティブが働いていることは否定できない。
        しかし、現行の容器包装リサイクル法のシステムを前提とする限り、大きなインセンティブとはなり得ない。
        そこで、拡大生産者責任の観点から、少なくとも、現在、市町村が担わされている回収の費用を生産者に負担させるシステムを採用することが望ましいと考えられる。
        具体的には、ドイツのようなデュアルシステムやフランスのようなエコ・アンバラージュのような制度を採用すべきであると考える。
        ただ、わが国では、家庭ごみの収集は市町村が行うというシステムが確立しているので、フランスのような制度が望ましいのではないかと思われる。

        (3) リサイクルよりもリユースへ
        しかし、ドイツにおいても、デュアルシステムを採用した結果、消費者はGPマークが付いている商品を買えば環境によいことをしているとの誤った認識をもつようになり、使い捨て文化を助長しているとの批判がなされている。
        この批判からもわかるように、リサイクルをすることが最終的な目標ではなく、あくまでも資源を枯渇させないようにするための手段にすぎないのである。
        したがって、単純にどのようなリサイクルシステムを構築するかという視点(サーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルの方が優れているなど)だけではなく、リユース(リターナブル容器等の利用)への移行を進める法制度も導入すべきである。
        例えば、容器包装リサイクル法施行後も製造量が増え続けているペットボトルのようなワンウェイ容器については、デンマークのプロダクトチャージのような制度を導入し、飲料容器が新たに生産される段階で課税を行うことが考えられる。ワンウェイ容器の生産者は、生産のたびに課税がなされることになるので、ワンウェイ容器の生産からリターナブル容器の生産へと移行するインセンティブになるとも思われる。その上で、デポジット制度を併用することで、リターナブル容器の回収率を上げることも可能になる。
        また、レジ袋については、韓国の1回用品(使い捨て商品)規制を参考にして、あらゆる商店においてレジ袋の使用を禁止するということも考えられるし、レジ袋に対する課税なども考えられる。
        これらの制度を導入することで、資源の枯渇を相当程度遅らせることが可能になる。

        (4) 環境教育の重要性
        ただし、どのような法制度を採用しようとも、消費者に大量消費をあらためようとの意識がなければ、実効性は乏しくなる。
        わが国でも、「地球にやさしい商品」の目安として、「エコマーク」(日本環境協会)、「グリーンマーク」(古紙再生利用センター)、「牛乳パック再利用マーク」(市民組織)などがあるが、消費者はどれほど意識しているのであろうか。生産者が「地球にやさしい商品」作りをめざし、エコマーク等のマークを添付しても、消費者にその意識がなければ元も子もないのである。
        そこで、消費者教育という形で、消費者の意識をあらためさせるような努力も不可欠であると考える。
        リサイクル先進国と言われるスウェーデンでは、文字を覚える前にごみの分別を学ぶなどとも言われている。ある幼稚園では、園児に出されるお菓子はスナック菓子などではなく、すべて果物であり、果物の芯や皮は捨てることなく園内で飼育されている動物に与えられている。別の幼稚園では、園内で野菜を栽培し、食べた後の生ごみを堆肥にして次の野菜を栽培している。
        また、ドイツでも小学校にコンポストが設置され、生ごみを堆肥にしているところも多いとのことである。
        これらのように、スウェーデンやドイツでは、学校教育の中でリサイクルの重要性を教え、子供のころからリサイクルに対する意識を高めているが、参考になるのではないかと思われる。

        結論的には、生産者の負担が重くなるようなリサイクル法を導入するとともに、リユースを促すような法制度も並行的に導入すべきである。さらには、学校教育の中で、子供たちに資源を枯渇させることのないような意識をもたせるべきである。

        【参考文献】
        田中勝監修 「リサイクル・世界の先進都市から」(リサイクル文化社)
        日本貿易振興会編集 「21世紀・世界のリサイクル」(日本貿易振興会)

      第5 地方自治体独自の取り組み

      1. 地方自治体に何ができるのか
        (1)あるべき法制度と容器包装リサイクル法との間には少なからぬギャップがある。これを地方自治体の独自の取り組みによって補完することはできないだろうか。
        容器包装リサイクル法による全国的な取り組みには、条件に恵まれない、あるいは取り組みに積極的でない自治体にも配慮しなければならないという限界がある。条件に恵まれ意欲にあふれた自治体が、住民とともに、容器包装リサイクル法の枠組みを超えた先駆的な取り組みを行うこと、特にごみ搬入総量の抑制につながる施策を講じることは、大いに奨励されなければならない。

        (2)しかし、現状では、地方自治体に、容器包装リサイクル法の枠組みを超えた先駆的取り組みを行うための有効な手段が与えられていない。
        つまり、法律上「合法」とされる商品の生産・販売について条例で罰則を設け、これを禁止することは、憲法上困難である。財政的な「援助」や広報活動などによる「啓蒙」も、財政的な限界はもちろん、費用対効果の観点からの制約がある。加えて、物流が高度に発達したわが国では、ごみが発生するまでの過程が一地方自治体内で完結しておらず、その実態を把握することにすら技術的に困難を伴う。
        そのため、容器包装リサイクル法の枠組みを超えた自治体レベルでの取り組みは、各自治体が施行間もない容器包装リサイクル法への対応に追われていることを考慮してもなお、低調と言わざるを得ない。実例として紹介しうる事例も数えるほどしかないのが実情である。
        そこで、本章では、既存の取り組みにとらわれず、現在の法制度の下でどのような可能性がありうるのかを、積極的に検討していきたい。

      2. 法定外目的税の導入
        この点で、最近注目を浴びているのが、「法定外目的税」である。
        これは、2000年(平成12年)4月1日施行の「地方分権一括法」による地方税法改正で創設されたもので、特定の使用目的や事業の経費とするため、地方税法に定められていない税目を、各地方自治体が条例を定めて設ける税である(地方税法4条6項、同5条7項、同731条~)。
        この税を新設するについては、あらかじめ国(総務大臣)の同意を得ねばならず、かつ以下のⅰないしⅲのいずれにも該当してはならないとされているが、産業廃棄物問題では処分場への廃棄物搬入に課税する例が多数に上っている。また、一般廃棄物に関連しても、後述の「すぎなみ環境目的税(レジ袋課税)」はこの制度をいちはやく利用したものである。

        ⅰ 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること

        ⅱ 地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること

        ⅲ その他国の経済政策に照らして適当でないこと

        なるほど、容器包装リサイクル法で義務づけられた負担金の支払が生産者への十分なインセンティブとなっていない現状に照らすとき、課税という方法にいかほどの直接的抑制効果があるかは疑問なしとしない。しかし、その啓蒙的効果及び確保された財源をごみ減量化のために活用できることも併せ考えると、今後の動向が注目される制度であるといえよう。

      3. 生産活動に対する働きかけの可能性
        (1)ごみ搬入総量の抑制のために一番効果的なのは、ごみの原料=商品の生産過程からこれを抑制してゆくことである。では、自治体が、生産そのものに働きかけることはできるか。例えば、ペットボトルなどのワンウェイ容器や消費者の立場からは不要な個別包装(いわゆる「パッケージ商品」)、あるいは現在は規制の対象外となっている容器包装以外のプラスチック製品の生産等に規制を加えることはできるか。あるいはリターナブル容器の生産などを援助することはできないか。

        (2)一般論からすれば、一自治体の努力でこれを行うのは困難であるし、有効とも言い難い。つまり、ある自治体の住民が消費する商品は、同じ自治体の中で生産されているとは限らない。むしろ、そうでない方が一般的である。従って、商品の生産に規制を加えたり、補助金を出したりしても、当該自治体へのごみ搬入総量への影響は望めない。しかも、一自治体のみが条例で生産活動に規制しようとしても、生産拠点を他の自治体に移転されてしまえば手の打ちようがない。

        (3ただ、「大都市」と言われる一部の自治体においては、一定の可能性はある。もちろん、「合法」な商品の生産を罰則によって規制するのは現実的でないが、上記の法定外目的税を活用して、ワンウェイ容器や業務用使い捨て食器、あるいは容器包装リサイクル法の対象外とされている容器包装以外のプラスチック製品等の生産に課税される生産者の「負担が著しく過重」とならない範囲で課税することは検討に値するかも知れない。

      4. 流通過程に対する働きかけの可能性
        次に、流通過程に規制を加えるという手法はとれないか。これが可能であれば、間接的に生産に対する規制となりうるであろう。

        (2)まず、他自治体からの商品の搬入に規制を加えたり課税することは、技術的に不可能である。なるほど産業廃棄物については処分場への廃棄物搬入に条例で課税するという例が複数あるが、移動する商品の流通過程を把握し、これを規制することは、流通が極度に発達したわが国では現実的でない。

        (3)これに対し、物流の最終過程、つまり消費者との接点において何らかの規制又は財政的援助を加えることには、「売り場」が固定されているという意味で、消費者そのものが移動する可能性(例えば奈良の規制が厳しければ大阪で買う)などを考慮してもなお、一定の技術的可能性はある。
        八丈島におけるデポジットの取り組み(*)や、東京都杉並区におけるレジ袋課税の取り組み(**)などはこの類型に属する。また、いわゆるファーストフード店などにおける使い捨て容器の大量使用や自動販売機に対する規制・課税、並びに消費者へ「ごみの出ない商品」を提供する小売業者に財政的援助をすることなど(***)は、今後、検討されるべき課題である。


        八丈島におけるデポジット デポジットを自治体レベルで実施しようとする取り組み(ローカルデポジット)は、技術的・財政的な理由で、なかなか定着していない。文献によれば、1982年(昭和57年)に埼玉県神泉村の村営レストハウスで実験的に導入されたのを皮切りに、1985年(昭和60年)には全国に30カ所に増加したものの、2000年(平成10年)の時点では日立市民生協、大分県姫島村、神奈川県江ノ島植物園等数カ所に減ってしまったという(安田八十五「ごみから社会を見つめ直す」)。
        そのような中、東京都八丈町では、2000年(平成10年)から、飲料容器のアルミ缶、スチール缶、ペットボトルについて町ぐるみでデポジットを実施し、実績を上げている(デポジット料は10円、累計回収率は80%以上)。これは、観光資源の保持という必要性があるとともに、離島=閉鎖された空間という条件があってのことと思われるが、今後も継続されることを期待したい(詳しくは東京都八丈町のHPを参照されたい)。

        **
        東京都杉並区におけるレジ袋課税(すぎなみ環境目的税)
        これは、上記の法定外目的税として、東京都杉並区が2002年(平成14年)3月18日に可決したものであり、いわゆる「レジ袋」1枚につき5円の税金を消費者に課税するものである。これによって、2003年(平成15年)7月までにレジ袋を33%削減することを目標としているという。不燃ごみの中におけるレジ袋の比率は重量比で4%を占めているばかりでなく、一般消費者に身近なものであり意識の涵養にも有意義といえるだろう。

        ***
        リターナブル容器の普及補助 現在の法制度では、生産・販売業者にとって、リターナブル容器を使用するよりも、ワンウェイ容器を利用する方が経済的に有利である。なぜなら、ワンウェイ容器の回収は自治体が税金で行ってくれるのに、リターナブル容器の回収は自費で行わなければならないからである。これは生活協同組合などがリターナブル容器を普及しようとする際、大きな障害となっており、改善が求められる。リターナブル容器が普及することによって、自治体の経済的負担は大幅に減少するのであるから、これに経済的補助を与えることには十分な合理性があるといえよう。

      5. 市民に対する働きかけの可能性
        (1) ごみ有料化だけでは不十分
        比較的多くの自治体で行われているのは「ごみ有料化」である。つまり、従前は無料であった家庭ごみの収集を、排出量に応じて有料にするというものである。
        なるほど、理論的には、ごみが有料になる→ごみを出さないようにする→ごみが出るような商品を買わなくなる→ごみが出るような商品が売れなくなる→ごみが出るような商品が作られなくなる…という循環が考えられる。
        しかし、現状としては、ごみを有料にするだけでは、その抑止効果は一時的なものにとどまっているようである。有料化後数年を経て、再びごみの搬入量が増加に転じてしまっている例もある(例えば滋賀県守山市など)。
        料金を余りにも高額に設定することは、住民の理解を得られないばかりでなく、違法投棄を誘発しかねない。また、ごみの出るような商品を買わないでおこうとしても、そもそもそのような商品が売られていないという現状もある。そうすると、ごみ有料化だけで、問題を解決することは困難と言わざるを得ない。

        (2) 教育・啓蒙活動の重要性
        これに対して、市民に対する教育・啓蒙活動は、その効果を数量化することは困難とはいえ、重要である。
        単に分別の徹底を指示するばかりでなく、なぜ、ごみを減らさなければならないのかということについて意識を啓発しなければ、いずれの施策も一時的なものとしかなりえない。ごみ有料化やレジ袋課税の取り組みも、直接の抑止効果より、むしろ市民への問題提起・啓蒙活動としての色彩が強い。名古屋市などでごみが減少していることも、市民の意識の変化を抜きに語れないはずである。

        (3) 市民運動に対するより積極的な支援を
        さらに、今後は、消費者(市民)の運動を、財政的なものを含め、より積極的に援助することも必要だと思われる。
        ドイツなどでごみの減量化が成功した背景には、不買運動を含めた、強力な市民運動があった。ごみが出る商品を使わざるをえない「ライフスタイル」を改善したり、ごみの出ない商品を普及させるためには、最終的には「下から」の運動が不可欠である。
        わが国でも、かかる運動を行う民間団体は数多くあるが、公的な援助を受けることができない団体も多く、いずれも財政的な制約を抱えている。現行法下では、ごみの再資源化に熱心な自治体・住民ほど負担が大きいという不公平な構図が生じていることは前述したが、これは是正されなければならない。ごみ減量化の具体的取り組みにはそれなりの費用がかかる。市民の「善意」だけに期待していても、運動は大きなものとなりえないというべきである。
        従って、地方自治体は、ごみ減量化につながる具体的な取り組みを行おうとする民間団体に対し、経済的なものを含め、より積極的な支援を行うべきである。ごみの減量化は自治体の財政負担の軽減に直結するのであるから、これを支援することには正義がある。
        また、法定外目的税やごみ有料化により確保した財源は、このような目的に使用してこそ生きるのではないか。より積極的、総合的な施策が必要だし、可能であると考えられる。

      第6 市民の取り組み

      1. 市民の意識
        ~内閣府「循環型社会の形成に関する世論調査(平成13年)」(以下、「世論調査」という)より
        (1)ごみ問題に関心のある人が約90%
        ごみ問題について、「非常に関心がある」(31.8%)、「ある程度関心がある」(58%)と回答した人の合計89.8%と約9割の人がごみ問題に関心があると回答している。

        (2)普段の暮らしの中でのごみ減量の実行は、関心の高さとと比べるともう一息
        このように、約90%の人がごみ問題について関心をもっているが、普段の暮らしの中でのかかわりについては、「いつも、ごみを少なくする工夫とリサイクルを実行している」と回答した人は14.4%で、「多少意識してごみを少なくする配慮やリサイクルを心がけている」(56.7%)と回答した人をあわせても合計71.1%で、ごみ問題に関心があるが実行にもう一息というところがうかがわれる。
        ごみを少なくするための取り組み(複数回答)としては、「詰め替え製品をよく使う」をあげた人が47%でも多く、「すぐに流行おくれとなったり、飽きたりしそうな不要なものは買わない」(36.6%)、「壊れにくく、長持ちする製品を選ぶ」(34.1%)と続いた。「レジ袋をもらわないようにしたり、簡易包装を店に求めている」は28.6%、「使い捨て製品を買わない」は22.7%にとどまった。

        (3)市民が求める国の施策は「リサイクル・リユース」より「ごみの排出を減らす取り組み」
        今後、国が最も重点的に対応すべきことがどのようなことかということについては、「リサイクルや焼却をする前に、まずごみの排出をへらすこと」と回答した人が49.1%と最も多く、男女、いずれの世代においても、「ごみや不用品を再使用(リユース)や再利用(リサイクル)することに取り組むべきだ」と回答した人の占める割合以上を占めている。
        市民のごみに関する関心は高く、国の施策としては、「リサイクル・リユース」より、「ごみの排出を減らす取り組み」求めている。

      2. 市民の取り組み
        (1) はじめに
        現在、程度の差こそあれ、多くの地方公共団体で容器リサイクル法に従った分別収集が実施されており、それに対応して市民はごみを分別して排出している。さらに、上記1(2)のとおり、ごみ問題に関心のある人は多く、ごみそのものを減少させるため、詰め替え製品を使う等して、できることから、ごみの排出量そのものを少なくする取り組みをしている市民もいる。
        しかし、一個人としての市民は、対企業との関係では販売されているものを買わざるをえないし、対行政(国・地方公共団体)との関係では、実施されている施策に協力するという受け身の立場になりがちで、個人の取り組みには限界がある。例えば、対企業との関係では、詰め替え製品は、企業が詰め替え製品を作っていなければ、市民がごみ減量のためにそれを購入したくても、購入できない。また、対地方公共団体との関係では、個人がごみを分別しても、その地域で分別して収集されなければ分別する意味がないし、逆に、分別収集がなされていても生活実態にそぐわないものであれば、協力することは困難である。さらに、対国との関係では、現行の容器包装リサイクル法は前記「第2 容器包装リサイクル法下の現状と問題点」で指摘したとおり、「ごみの排出を減らす(減量化)」十分な効果をもたらしてはいないが、世論調査では市民は「リサイクル・リユース」より「ごみの排出を減らす取り組み」を求めており、市民の求める施策と国の施策にズレが生じている。しかし、個人の力のみで、国の施策の転換を求めるのは困難である。
        商品を使用しごみを排出する側の市民としては、対企業との関係では、ごみを多く排出する商品を購入しない、対行政(国・地方公共団体)との関係では、自分達が求めている施策、より協力しやすい施策を実現させるといった働きかけが必要となり、その働きかけのためには、企業や行政に影響力を及ぼしうるだけの組織力が必要である。
        ここでは、ごみ問題で活動する市民の団体についていくつか紹介する。

        (2) 具体例
        ア 中部リサイクル運動市民の会
        1980年(昭和55年)に使い捨て社会や環境破壊への危機感から有志が集まって発足し、2000年(平成13年)に特定非営利活動法人の認定を取得した団体で、単に呼びかけ、提案に終わるのではなく具体的なシステムを作ること、市民・行政・企業・マスコミ・市民団体のパートナーシップによる関係をつくること等の5つの活動理念を据えて活動している。
        具体的活動内容は多岐にわたるが、例えば、グリーンコンシューマー支援のために、地域ごとに環境にやさしいお店ガイドを作成したり、分別収集を行っていない品目について、市民から相談を受け、資源ごみ回収の運搬回収業者の手配や、回収のためのボックスや袋の調達についてサポートし、ボランティアで分別回収を行うことを可能にするといった活動をして市民によるシステム作りのサポートをしている。また、愛知県日進市のごみ処理基本計画策定事務局として、ごみの組成調査や策定委員会のホームページの開設、市民アンケートの実施等をサポートする等して市民が行政に積極的に関わることを支援する活動を行っている。

        イ 市環境基本計画素案検討会(東京府中市)
        2000年(平成12年)5月、環境基本計画の素案の検討会の委員を市が公募、自営業者会社員、主婦、学生、新聞記者といった20代から70代の58名の市民が応募した。4分科会に別れ、月2回、夜市役所に集まって、活動した。
        ごみ排出量の減量目標設定にあたって市の清掃課が20%が限度としていたのを、市民委員の提案で、市民の努力でさらに減らせると50%減とすることにまとめる等、行政任せにしたのではできなかったであろう素案となった。議論の結果、計画の進み具合を監視し、利害関係者間での調整をするために市民・事業者・市が参加する「計画推進協議会」を設置することになった。

        ウ とよなか市民環境会議(大阪府豊中市)
        豊中市においては、環境基本条例(1995年(平成7年)10月制定)において、環境施策に関して市民・事業者・行政の三者の連携した取り組みを定めていることから、1996年(平成8年)5月に社会教育団体、消費者団体、PTA、女性団体、消防団、製造業、流通業、ホテルといった事業所、商工会議所、青年会議所、環境保護団体等のNGOや大手スーパーといった約1500団体が参加して結成された。4つの部会を発足させ、役員会の下に自主的な市民約30名からなるワーキンググループが、提案づくりや行動の中心となった。
        会議だけでなく、より多くの市民の参加を得るため「豊中環境塾」を開催したり、学習会や出前の環境講座を行ったり、エコオフィス運動、ストップアイドリング運動といった行動を行い、それで得た経験をもとに「豊中アジェンダ21」(地球環境を守る豊中市民行動計画)が策定された。
        「豊中アジェンダ21」は、市による環境基本計画策定と併行して、策定され、市の策定する環境基本計画と共通の目標を設定した市民の行動計画で、市による環境基本計画と車の両輪として、市民・事業者・行政がそれぞれの計画を推進しながら課題を認識しあい、それらを新たな施策や行動に反映させることを目的としている。

        エ ごみ市民委員会(東京都狛江市)
        1991年(平成3年)5月に、市がリサイクルセンターの建設を一旦決め、用地選定をしたが、その手続きの唐突さに市民が反発し、ごみ基本計画策定の中でリサイクルセンターの是非について検討するということになり、同年12月に市民12名と学識経験者6名で構成するごみ市民委員会が発足した。行政は事務局に徹し市民委員会の活動をサポートするという形をとった。
        市民の労力の提供を得てのごみの組成調査や実態調査、イベントを実施し様々な機会に活動を市民にアピールすると共に、他都市の取り組み状況などを調べ、「リサイクルセンター用地選定に関する答申」をまとめるとともに、「こまえごみ半減計画」をまとめた。リサイクルセンターについて、結果的には用地は当初予定地が選ばれたが、当初案とは大きく異なる施設の構想が提示され、周辺環境に配慮した都市型リサイクルセンターが建設された。

        オ さつべんエコクラブ(札幌弁護士会会員有志)
        特製マグカップを希望者に進呈し、弁護士会の給茶機を使用するにあたって使い捨て紙コップでなく、マイカップを使ってもらう、弁護士間の連絡での封筒の再使用等、各自のできることから始めようというのを基本的スタンスとして身近な事柄から取り組みを始めている。さらに、個々人の活動だけでなく、弁護士会に対して、両面コピー化の推進や連絡文書のペーパーレス化などの働きかけも行う予定。

        (3) 海外での取り組み
        ア ドイツ自然保護運動(BUND)
        1970年(昭和45年)頃設立され、現在2200の支部、合計26万人の会員を持ち、日本円にして数十億の予算規模のドイツ最大の環境NPOである。
        学齢期前からの環境教育を行っており、全国の幼稚園教師に無料で定期的に環境教育を紹介する雑誌を送付したり、研修や手引きを配布し、ごみを出さないためにはどうすればいいか(例えば、パックに入った飲み物を持っていく代わりに水筒に飲み物を入れて持っていき、おやつも金属製のお弁当箱で持っていく等)を幼稚園児のうちから教えている。数年前には、青少年部が電子のごみはいらないと「たまごっち」の不買運動を行った。また、サッカー場で使用されていた使い捨てコップをサッカー協会に助言して再利用できるカップが使用されるようにしたりした。

        イ グリーンピース
        1971年(昭和46年)、アメリカのアラスカ沖での核実験に抗議するため、12人のカナダ人が船を出したことがきっかけとなり結成された。国を超えたグローバルな活動、行動主義、現場主義、データの公開、独立した資金源等を活動理念として、全国に約250万人の会員を持つ(日本人は約4500人)。
        2001年(平成13年)には、メンバー21人がブッシュ政権京都議定書離脱に抗議して、米企業ランキング「フォーチュン500」より上位100社に対し、1週間以内に米政府の方針に反対する意思表示しない限り、企業名を公表して消費者に不買運動を呼び掛けると通告したり、フロンも代替フロンも使用しない冷蔵庫を企業に委託して開発したりといった企業をも動かす活動を行っている。

      3. 私たち市民のめざすべき方向
        市民の団体によって様々な取り組みがなされ、地方公共団体の施策への関与、市民への情報提供等、一定の成果を上げていることがわかる。
        ただ、海外の環境団体との違いを見ると、日本の団体は規模がかなり小さく(BUND)は会員数約26万人と言われているところ、日本での最大の環境保護団体である日本野鳥の会は会員数約4万人と言われている)、上記1(2)のとおりごみ問題は市民共通の関心事ともいえるが、積極的に活動しようとする人の数はそう多くはない。また、規模の問題もあってか、地方公共団体からの働きかけで組織された団体あるいは地方公共団体の制度内での活動をしている団体が多く、対国、対企業との関係での活動にまでにはまだ及んでいないようである。
        しかし、地方公共団体は国の施策に基づいて動かざるを得ず、前述のとおり、国の施策(あるいは企業の方針)と市民の求める施策が必ずしも一致するとは限らない。市民のイニシアティブで国あるいは企業に対し、政策(企業方針)提言的な行動をする必要があり、そのためにはより大きな組織力を獲得すべきである。
        組織力の要素としては、資金・人がある。
        まず、資金の問題について考えると、これまで日本の市民団体は資金集めにそれほど積極的ではなかった。しかし、市民団体に参加するにあたって誰でも参加しやすい方法が、市民団体の会員になって会費を払うことや、寄付等の資金的貢献であり(BUNDも寄付や助成金で運営されている)、アメリカやヨーロッパでは税制上の優遇措置が制度化されていたこともあってか、日本と比べ、市民団体は積極的に資金集めをしてきた。日本においても、2001年(平成13年)10月から適用条件等制約は大きいものの一定のNPO法人に対する寄付者の税法上の優遇措置が認められるようになっており、こういった制度の拡大とともに、市民団体も資金集めのためより積極的な工夫をすべきである。
        次に人の問題について考えると、関心があっても活動へと結びつきにくいのは、これまでの日本では多くの市民(特に男性)が職業生活に多くの時間を費やさざるを得なかったこと、ごみ問題について活動しようとすると、大量生産・大量消費によって成り立っている企業(例えば、ペットボトル飲料を大量に生産することで収益をあげている企業)、適切な規制を怠ってきた行政に対して批判的な立場をもたざるをえない場面が生じることが、積極的活動を思いとどまらせる一つの要因になってきたと考えられる。職業生活に多くの時間が割かれ、活動のための時間がとれない、ごみ問題に取り組もうとすると企業や行政に批判的になりかねないという問題はいずれも、大量生産・大量消費という私たちのこれまでの生活様式を前提とした問題であるが、市民の中で「豊かな生活=大量生産・大量消費」という考え方自体見直されつつある。それを反映して、企業も勤務時間の短縮を試みたり、単に便利、安価な製品づくりというだけではなく、環境に優しい製品作りをしたり、行政についても前記「第2 容器包装リサイクル法下の現状と問題点」で指摘した名古屋市のように積極的にごみ問題に対応し一定の成果をあげたりと行政・企業姿勢も変化しつつあり、ごみ問題に関してこれまでよりも活動しやすい環境が整いつつあるといえるであろう。この環境を生かし、さらに拡大するためにも、ごみ問題について行政・企業に対し、政策(企業方針)を提言するためにも、私たち市民は行政あるいは企業が公開する情報を受け取るのみならず、積極的に情報を取得しなければならない。例えば、容器包装リサイクル法に関してみても、「容器包装リサイクル法が施行されましたので、分別してください」という行政や企業の広報に従うのみならず、自分の分別したごみがどうなっているのか、分別して現実にごみは減っているのかということを知ってこそ、これからどうするべきなのかということを考え、行政や企業に意見を言うことができる。そして、容器包装リサイクル法が施行されても、現実にはごみの減量化の十分な効果を得られていないといった現状を知ることによって、関心はあるが実行・活動までは至らないという段階から普段の暮らしの中でのごみの減量の実行、さらには、ごみ問題に関する積極的な活動へとつながっていくものであると考える。

        【参考文献】
        循環型社会白書 平成14年版 環境省編
        環境総合誌イー’ズVol.220 中部リサイクル運動市民の会発行
        日弁連公害対策・環境保全委員会ニュースNO.24

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