奈良弁護士会

司法修習生の給費制の継続を求める会長声明

奈良弁護士会
会長  藤井 茂久
2009年10月13日

 裁判所法の改正により、平成22年11月から、司法修習生に対して給費を支給する制度(給費制)が廃止され、司法修習生に対して国が修習資金を貸与する制度(貸与制)の実施が予定されている。

 しかしながら、給費制の廃止は、司法修習制度の根幹を揺るがしかねず、質の高い法曹を養成するという法曹養成制度の理念に反するものといわざるを得ない。

 すなわち、我が国においては、司法制度を通じて、国民の権利を擁護し、社会正義を実現するという法曹の使命の重要性・公共性に鑑み、司法試験合格後も、合格者を直ちに実務に就かせず、司法修習を課すことによって、高度の専門的能力と職業倫理を備えた質の高い法曹を養成するという司法修習制度が採られている。そして、これまで、司法修習生を司法修習に専念させるため、修習専念義務を課し、その一方で、生活を保障するために給費制が採られてきた。従来、この制度の下、法曹資格の門戸は貧富の差を問わず広く開かれ、多様な人材が、裁判官、検察官及び弁護士として輩出されてきた。

 また、給費制は、法曹とりわけ弁護士の公共性・公益性を制度的に担保する役割も果たしてきた。当番弁護士制度、法律相談センター事業、人権擁護のための諸活動等の弁護士・弁護士会による各種の公益活動は、弁護士の公共性・公益性が具体的な形として表れたものであるが、この様な諸活動を支える弁護士の使命感は、給費制の下での司法修習制度によって醸成されてきたといっても過言ではない。

 ところで、法科大学院制度が導入され、法曹を志す者は司法修習生となるまでに多大な経済的負担を負うことになったが、この上給費制が廃止されることになれば、更なる経済的負担の増大は避けられず、次代の司法を支えるにふさわしい資質・能力を備えた人材が、経済的事情から法曹への道を断念する事態も危惧され、その弊害は極めて大きいといわなければならない。

 以上の諸事情に鑑みれば、給費制を廃止することは、高い専門的能力と職業倫理を備えた法曹の養成を担ってきた司法修習制度の根幹を揺るがしかねず、また司法制度改革が目指す国民のための質の高い法曹養成の理念にも反するものというべきである。

 よって、当会は、司法修習生に対する給費制の継続を強く求めるものである。

戻る