奈良弁護士会

0742-22-2035
頼れる専門家集団となろう!~会長あいさつ~

頼れる専門家集団となろう!~会長あいさつ~

 
奈良弁護士会 会長  佐々木 育子
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1.福祉業界に関わって考えてきたこと

 私が弁護士になった平成11年は、ちょうど福祉の構造改革が叫ばれていた時代でした。少子化が進み、人口の4人に1人が高齢者となる時代がまもなく到来すると言われる中で、平成12年4月から介護保険が始まり、そのことで介護サービスが「措置から契約へ」と大きく変革していくといわれていました。つまり、これまで行政が措置として指示し、決定していた高齢者の介護サービスが、当事者と介護事業者の契約によって提供され、利用料として一部負担金を支払う仕組みに変わったのです。そのために、例えば認知症高齢者など、契約当事者として判断したり、自分で利用料をきちんと払えない人の権利をどう守るかと言うことが問題となり、そのために成年後見制度を整備する必要があるとされ、介護保険の成立と同時に新しい成年後見制度が始まりました。また介護保険で始まった措置から契約への流れは、その後児童福祉や障害者福祉にも広がり、それとともに、虐待防止など、市町村の福祉行政の役割がどんどん大きくなっていく時代でもありました。

 私が弁護士になったころは、こういった時代の流れに合わせて、弁護士会でも、高齢者や障害者の福祉に専門性をもつ委員会を作って、権利擁護活動をすべきということが盛んに問題提起されていました。そして、奈良弁護士会でも平成12年4月に高齢者障害者支援センター運営委員会が発足し、私はそのための準備委員会にかり出され、そのまま同委員会の設立当初のメンバーとして活動することになりました。またちょうど平成13年に奈良で開催された日弁連の人権擁護大会でも「契約型福祉社会と権利擁護のあり方を考える」というテーマで、介護保険の問題を取り上げるシンポジウムが開催されました。私は、弁護士になったばかりでありながら、開催地派遣の委員として、人権擁護大会の実行委員会にも参加させてもらい、ドイツの介護保険法や進んだ福祉制度についての海外視察に同行する幸運にも恵まれました。こうして様々な偶然が重なり、私の弁護士としての活動の第一歩は、福祉という新しい分野から始まったのです。このころは、福祉を専門とする弁護士はほとんどおらず、私は手探りのような状態で、高齢者や障害者の権利擁護に弁護士がいかに関わるか、出来るだけ現場に足を運びながら学び、福祉関係の行政や事業者の人たちと一緒にいろんな困難事例に関わることになりました。そうしているうちに、私自身もこの世界にすっかり魅了され、現在に至るまで、高齢者障害者支援センター(後に「高齢者障がい者支援センター」に名称変更)運営委員会を中心に会務活動に参加してきました。

 このように私は、長く福祉を専門としている訳ですが、福祉の世界では、弁護士に対して敷居が高いと感じ、困っても相談に行けない当事者や支援者が未だに多いことにいつも驚いています。もちろん弁護士人口は増え、昔よりは裁判所の周りではなく、一般市民にアクセスしやすい場所に事務所を開いている弁護士も増えているのですが、「相談しにくい」「費用がいくらかかるかわかりにくい」「難しいことをいわれて断られるのではないか」という心理的なアクセス障害を抱えている人は、まだまだ多いと思います。平成27年度において、奈良弁護士会高齢者障がい者支援センター運営委員会では、日弁連のモデル事業を受け、半年間「地域包括連携事業」に取り組みました。この企画で重視されたのは、顔の見える固定のメンバーで、こちらから各市町村の地域包括支援センターに毎月必ず足を運び、こちらから積極的に相談の窓口を開くということでした。この取り組みを通じて、「弁護士がどういう人なのかがよくわかった」「相談しやすくなった」という地域包括支援センターからの感想が多く寄せられました。引き続き市町村が相談料を出す形で、地域包括連携事業が継続することとなった市町村もありますし、またそういう契約に結びつかなくても、「あの弁護士に相談してみてはどうか」という形で、法的ニーズを抱える高齢者の法律相談を紹介してくれたケースも多くあります。この結果を通じて、こちらからアウトリーチして、「顔の見える関係」を作り、「福祉のことをよく分かっている」という信頼を得ることが、心理的なアクセス障害を取り除く大きなきっかけになったと実感しています。

2.弁護士の活動領域を広げていくために

 司法改革の中で、弁護士の数は増え続けており、「弁護士が増えたから、仕事がなくなった」「経営が苦しくなっている」という声もよく聞かれるようになっています。しかし、奈良県内で弁護士の数が飽和になっているかというと、そうではなく、本当はすぐにでも弁護士に相談した方がいいのに、弁護士につながることが出来ないでいる人は、まだたくさんいます。そのために、いまやらなければならないことは、様々な分野において、弁護士が「顔の見える関係」を作り、もっと相談しやすい弁護士をめざすことです。

 例えば、奈良弁護士会には、「民事当番」という制度があります、平日なら、昼間に3人、夜間に1人、土曜においても事務所に待機している弁護士をおいて、いつでも相談の予約を受け付けている制度です。しかしそもそも制度自体があまり周知されておらず、弁護士会に電話して、希望の日時の弁護士が誰かを教えられるだけで、相談相手の弁護士を選ぶことができません。しかし利用者の目線にたてば、自分の抱えている法律問題に専門性があり、「詳しい」弁護士に相談を聞いて欲しいと望むのが普通だと思いますし、また自分の自宅や職場から近い事務所を選びたいと思うのは当然でしょう。また離婚問題などですと、「女性がいい」「男性がいい」という性別の希望もあると思います。そういった個別のニーズを満たせるような予約システムであるためには、この日の担当をしている弁護士が、どこに事務所を構えているどんな顔の弁護士なのか、そして何を専門として、どんな取り組みをしているのかを、予約の前に知ることができる、そしてその中から選ぶことができるシステムが求められていると思います。またいまやネット社会ですので、世の中のあらゆるサービスがインターネットで予約できるのはあたりまえの時代です。弁護士への法律相談も、いつでもインターネットで予約できるという利便性も、時代のニーズがあるだろうと思います。できれば、会長として務める一年間に、こういった相談者のニーズに応じた新しい民事当番のシステムを作り上げられるように努力したいと思っています。

 ただ、大事なことは、このように弁護士へのアクセス障害を取り除き、もっと相談しやすい弁護士をめざすこととあわせて、それぞれの弁護士が自分の専門性を磨き、依頼者の要望に応えられる質の向上を図っていくことだと考えています。せっかく司法改革で人が増え、マンパワーが増強されているのですから、いままで弁護士が扱ってこなかった新規分野にも、どんどん取り組み、頼れる専門家集団として弁護士の活躍の場を広げていくべきと思います。

3.風通しのよい弁護士会をめざして

もう一つ感じているのが、いまは同じ弁護士会員同士でも、「顔が見えない」という問題があることです。どうしても人数が増え、他の単位会からの移籍が増えていくとそういうことも起こってくるでしょう。しかし、そうはいっても、できるだけ交流を深め、弁護士同士でも顔の見える風通しのいい弁護士会を作っていきたいと思っています。一年間、副会長共々、精一杯がんばりますので、どうか宜しくお願いいたします。

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