奈良弁護士会

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会長声明

商品先物取引の不招請勧誘禁止規制撤廃に反対する会長声明

2014/02/14

奈良弁護士会
会長 以呂免  義雄

 

 先物取引業者による不当な勧誘によって多数の悲惨な消費者被害を発生させた商品先物取引については,消費者・被害者関係団体等の長年にわたる強い要望が積み重ねられた結果,ようやく2009年(平成21年)に商品取引所法が改正され,商品先物取引に不招請勧誘禁止規制が導入された。これによって,商品先物取引に関する苦情相談は減少している。

 ところで,2012年(平成24年)9月に証券・金融・商品を一括的に取り扱う総合取引所構想実現を目的とした改正金融商品取引法が成立し,同法の定める金融商品に商品先物取引が加えられたことにより,同取引所において取り扱われる商品先物取引は同法によって規制されることになった。

 しかし,現行の金融商品取引法施行令第16条の4(不招請勧誘等が禁止される契約)では店頭デリバティブ取引のみが対象とされており,市場デリバティブ取引は対象外であることから,同法施行令を改正して商品関連市場デリバティブ取引を対象取引に加えなければ,改正金融商品取引法の施行が迫っている2014年(平成26年)3月には,総合取引所で扱われる商品先物取引については不招請勧誘禁止規制が及ばなくなってしまう。

 そのような中,昨年6月19日の衆議院経済産業委員会では,内閣府副大臣が,総合取引所での円滑な運営のための法整備に関する議論の中で,委員の質問に対し「商品先物取引についても,金融と同様に,不招請勧誘の禁止を解除する方向で推進していきたい」旨の答弁を行った。これは,総合取引所において商品先物取引業者に対しても監督権限を有することとなった金融庁が,総合取引所に関する法規制について,不招請勧誘禁止規制を撤廃する方向での検討を進めていることを示すものである。

 しかし,当会は,商品先物取引について不招請勧誘禁止規制を撤廃することに強く反対する。

 そもそも,商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制は,商品先物取引業者が,不意打ち的な勧誘や執拗な勧誘により,顧客の本来の意図に反した取引に引き込み,多くの悲惨な消費者被害を生んできたという長い歴史を踏まえてようやく実現したものである。

 そして,2012年(平成24年)2月から同年6月にかけて開催された産業構造審議会商品先物取引分科会では,不招請勧誘禁止規制を見直すべきとの意見が出されたものの,同年8月21日付上記分科会報告書は,「不招請勧誘の禁止の規定は施行後1年半しか経っておらず,これまでの相談・被害件数の減少と不招請勧誘の禁止措置との関係を十分に見極めることは難しいため,引き続き相談・被害の実情を見守りつつできる限りの効果分析を試みていくべきである」,「将来において,不招請勧誘の禁止対象の見直しを検討する前提として,実態として消費者・委託者保護の徹底が定着したと見られ,不招請勧誘の禁止以外の規制措置により再び被害が拡大する可能性が少ないと考えられるなどの状況を見極めることが適当である」とし,商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を維持することが確認された。

 しかるに,それから間もない現時点において,これらを変更しなければならない事情は何も生じておらず,規制を撤廃する方向で検討することは極めて不当である。

 商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制の導入以降,商品先物取引に関する苦情件数は減少しているとはいえ,被害の発生が限りなくゼロに近づきつつあるとは言えず,また,同規制を潜脱する業者の勧誘により消費者が被害を受ける事例がなお相当数報告されている。政府は,商品先物取引の出来高が大幅に減少していることを懸念し,その市場活性化対策として,再び,商品先物取引についての不招請勧誘禁止規制を撤廃しようとしているが,同規制を撤廃すれば,以前のように知識経験が不十分な多数の個人投資家が取引に巻き込まれ,再び商品先物取引被害が増加する危険が非常に大きい。

 よって,当会は,消費者保護の観点から,商品先物取引について不招請勧誘禁止規制を撤廃することに強く反対するとともに,金融商品取引法施行令には商品関連市場デリバティブ取引を追加することを強く求める。

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